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亨
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母から聞いた自分が生まれる前の話。 家を増築することになったのですが、大工さんに怪我や病気が頻発してなかなか工程が進まず、 なにかあるかもと、お坊さんに見てもらったそうです。 すると、「中学生くらいの子供が怒っている」とのこと。 実家の前には踏切があるのですが、以前そこで事故で亡くなった子だそうです。 そこで御祓いをする事になり、亡くなった子の両親にも来ていただいたそうです。 しかし、その霊は思念が強すぎて成仏は難しいとの事。 とりあえずは怒りもおさまったし、ご両親についていくから大丈夫という事になったそうです。 その後特に問題は発生せず、無事増築は終了しました。 最初この話を聞いた時は恐かったですが、その後何もなかったので、しばらくしてほとんど忘れていました。 自分が中学生になり、中間テストの勉強のため夜更かししてました。 時計を見ると既に深夜2時をまわっていました。 そろそろ寝るかなと、電気を消し床につくと、 「トントン」とドアをノックする音がしました。 てっきり親が様子を見に来たのかと思い、返事をしようとしたんですが、声が出せませんでした。 それどころか、身動きひとつできなくなっていました。 金縛りに遭うのはこれが初めてだったので、なにが起こったのか全くわかりませんでした。 「トントン…トントン」 ノックはまだ続いてます。 すると、少しずつノックの調子が変わってきました。 「トントン…トントンッ…ドンドン…ドンドンッ……ドンッドンッドンッ!」 そして… 「亨~…亨ぅ~…とぉおぉるぅ~!とぉおぉるぅぅぅぅ~!!」 という不気味な叫び声が、激しくドアを叩く音と共に聞こえてきたんです。 僕はそこで気を失ってしまい、気づくと朝でした。 その朝、家族にその話をしても、誰も部屋には行ってないと言われました。 それから、自分の部屋では不思議な事が起こるようになりました。 金縛りにはしょっちゅう遭い、変な声もしばしば聞こえるようになりました。 ドアに背を向けて昼寝している時に、首筋に氷をつけられた感触があり、 びっくりして振り返ると、青白い人の形の輪郭のみが見えるという事もありました。 さすがに耐えられなくなり、親になんとかしてくれと頼み、お坊さんを呼ぶ事になりました。 そして自分の部屋をみてもらったところ、 「血だらけの子供が、ドアの前ですごい形相で立っている」と言うのです。 またあの子が帰ってきていたのでした。 とにかくその場で御祓いをしてもらい、後日、その子の親のところへ報告に家族で出向きました。 僕は初めて会うそのこの両親に挨拶し、事の全てを話しました。すると… 「あなた、亨君ていうの…。うちの子間違えてしまったのね…」 「えっ…?どういう事ですか?」 「うちの子が事故に遭った時、友達もその場にいたの。その友達が亨っていう子なの。 その子の話によるとね、うちの子、線路に足が挟まって身動きできなかったんですって。 それで亨君に何度も助けを求めたんだけど、もう遮断機も降りていて、恐くて動けなかったんですって。 亨君、お葬式の時泣きながら私に謝ってくれたの。 私は『あなたが悪いわけじゃないから気にしないで』って言ったんだけど、 あの子が最後に言った言葉が忘れられないって。 『亨ーっ!どうして助けてくれないんだーっ!友達だと思ってたのにーーっ!』って。 あの子きっと、あなたを友達の亨君と間違えて、あなたの所にいったんだわ。 背格好も似てるし、ちょうど同じ年だし…。 ごめんなさいね、迷惑かけて…」 その話を聞き、恐さよりも悲しくなりました。 その後、ご両親と共に本物の亨さんが家まで来て、もう一度御祓いの儀式を行ないました。 本物の亨さんは涙を流して謝っていました。 それからは何事も起こらなくなりました。 長文、駄文失礼いたしました。 以上が僕が中学時代に起こった出来事です。 僕にとっては恐い話というより悲しい話なんですが、 ここには合うかなぁと思って書きました。 本物の亨さんは、この件があるまでは現場にきた事はなかったのですが、 それ以来、毎年命日にお参りしにきています。
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