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古ぼけた小さな鍵
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短編2分
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大学生の頃、小さな個人スーパーでバイトしてた。 そのスーパーは朝の6時から開いてて、俺は早朝勤務(朝の6時~大学に行くまで)だった。 小さなスーパーなのになかなか時給が良く、1限がない日はほとんど入っていた。 しばらくして開店作業を任されるようになって、店の鍵を預かることになった。 渡されたキーホルダーには裏口の鍵、シャッターの鍵、 入り口の鍵などと一緒に、古ぼけた小さな鍵がついてた。 店長に何の鍵か聞いたんだが、適当にはぐらかされてしまった。 だが、開店作業には全く使わなかったし、 倉庫か何かの鍵だろうと特に気にしていなかった。 しばらくたって、いつものように勤務してると、裏口で何か叫び声が聞こえた。 店の中には俺とパートのおばちゃんの二人しかいないし、一緒に作業中だったから、 不審者かと思って裏口におばちゃんと二人で行った。 するとそこには、ぼさぼさのいかにも長い間洗っていない長い髪のじいさんがいた。 じいさんは垢だらけのパジャマのような服の上からぼろぼろのレインコートを着て、 人形を抱いたまま何かうめいていた。 何がなんだかわからず絶句していると、 パートのおばちゃんは冷静に「鍵を貸して」と言った。 事情がよくわからないまま鍵を渡すと、 おばちゃんはそのまま爺さんを引きずるようにして店の裏の小さい倉庫に引きずっていった。 そしてあの古ぼけた鍵で倉庫を開けると、爺さんをそこに押し込み、また鍵をかけた。 爺さんはしばらく内側から扉を叩いていた。 あまりのことに呆然としていると、パートのおばちゃんが言いにくそうに言った。 「あの人ね、ここの社長のお父さんなの。 認知症が進んで、たまに店に来るのよ。 昼間や夜は店長がいるからいいんだけど、朝は店長が来るまでここに入れてるのよ。 もう社長も世話する気がないらしくてね、お風呂もいれずにほったらかしなんだって。 ご飯もあんまりあげてないらしくてね、たまに夜に来たときに惣菜のてんぷらを食べたりするみたい」 自分の父親にボケたとはいえこんな仕打ちができるのかと思ってゾッとした。 爺さんは店長が来るまで倉庫の中から時々泣き声のような叫びをあげていた。 そんな社長や店長が怖くなりバイトはすぐに辞めた。
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