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伊豆のトンネル
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中編3分
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伊豆にある有名な旧道のトンネルの話。 友達のD君から聞いた話です。今から7年ほど前D君を含む4人で、なんとなく肝試しに行こうということになりました。 彼らはとある温泉の街に住んでいたので、そのトンネルまでさほど遠くもなく、そこに行こうと決まりました。そのトンネルは有名なスポットで、トンネルの真ん中で車が急に止まってしまい、ボンネットを開けたら長い髪がからまっていたとか。 車の窓という窓に、手跡がいっぱいついていたとか。そんな話がささやかれていましたが、実際に髪がからんでしまったり、手跡をつけられてしまった人は、身近にはいなかったのです。 かくいう私も、確かに暗くて怖い場所で自分は決して行かないけれど、そんなのは噂だと思っていました。ええ、この話を聞かされるまでは。 D君達は4人で一台の車に乗って、その場所を目指しました。伊豆の山中を深夜に通ったことがあるでしょうか?今はどうか知りませんが、その当時はただ真っ暗な道がうねうねと続いていました。 おあつらえむきに、小雨まで降り出したということです。もうそろそろなんだけどという地点で、彼らは目的地を通り過ぎたことに気がつきました。 霧も立ち込めていて、旧道に入るポイントがわかりません。一往復半しましたが、初めて通る道でもないのに辿りつけません。 実はそのポイントを通過した直後のカーブの所に、さびれたドライブインがあります。小屋のような売店とトイレがあるだけなのですが、この規模にしては駐車スペースはまぁまぁです。 しかし入りにくいので、惰性で存在している。そんなところです。 さて、D君達は一旦その駐車場に入りました。通過した時にタクシーが停車していたので、道をたずねようと思ったのです。 運転手から聞けば、目的地は目と鼻の先です。霧と暗闇のため、見落としていたのでしょう。 やっと旧道に入ることができました。しばらく進むとそのトンネルが、ぽっかりと黒い口を開いて彼らを待ち構えていました。 トンネルの手前で車を降り、全員でトンネルの中を歩きました。特に何事もなく、再び同じ道を戻ってきました。 カメラを持ってきたので、何枚か写真を撮りあいました。ふと気がつくと、D君以外の3人の様子が変です。 皆一様に黙り込み、うつむいているのです。「帰ろう。 」一人が怯えたようにつぶやきました。D君はわけがわかりません。 「いいから、帰ろう。」促されて、その場を後にしました。 帰り道、3人が何を感じたのか誰も口を開こうとしないので、D君も特に追求しませんでした。それから10日ほどたち、肝試しのメンバーの一人から連絡が入りました。 写真ができたというのですが、友人の口調がいつもと違うのです。友人がD君に、「来てから話す」というので彼の家へ出向きました。 D君は写真を見せてもらいました。なんだかぼんやりとした白いものが写っているようにも見えますが、特にどうということはありませんでした。 何枚か見ているうちに、顔のようなものが写っているものがありました。ちょうど木の枝というか、葉が茂っている部分に小さく・・・。 「お、これ心霊写真じゃねぇ?」嬉々とするD君に向かって、友人はぼそりと「よく見ろよ。」と言いました。 目を凝らして良く見てみると、はっきり顔であることが確認できました。「お前、その顔覚えてないのか?」友人の言葉にD君は記憶をたどりました。 その顔は、4人が道を尋ねた、あのタクシーの運転手だったのです。友人の話によれば、あの運転手が別のメンバーの夢に夜な夜な出てくるというのです。 明らかに怒っている様子で。D君とはその後ある事情により、連絡が取れなくなってしまい、運転手にとりつかれた彼がどうなったのか?その写真をどうしたのか?知るすべはありません。
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