高校の山岳部で、飯豊連峰を縦走した。
下山日に、高度を下げ最終宿泊地へと向かった。
林の脇に川筋を見る細い道を進み、モッコ渡しを渡り、
(水面から十分な高度を取った)
河原の一角の大きな木の根本に三張りの天幕を張り、
幕営を始めた。
夕食の準備と帰路の偵察を行い気分は最高。
皆で歌を歌い大いに盛り上がった。時刻は9時前後。山行としては、
かなり遅くまで騒いでいた事になる。
残った食料を平らげ、
さあ寝るかと準備を始めた時、
OBの1人が不思議そうな顔をした。
「どうしたんですか」
と問いかけると、
「遭難者かもしれない。静かにしろ」
と言う。
聞き耳を立てたが、
川のせせらぎ以外に聞こえない。
OBが見つめている先を追うと、
懐中電灯の光が林を縫うように近づいてくる。
ヘッドランプを付けた登山者と同じぐらいの高さを、
林の木々に遮られながらモッコに近づいてくる。
自分達は次に起こるであろう事を想像し、
静まり返った。
すると光が消え、
あたりは漆黒に染まった。
モッコ渡しは渡れば大きな音がする。
異常があれば見に行き助ければいい。
静寂の中、数分暗闇を見つめていた。
突然3年生が大きな木の梢を見つめ、
「何だこれは」
と叫んだ。
全員が立ち上がり、
彼の見つめる梢を眺めた。
そこには、
先ほど梢に隠れながら近づいてきた明かりが輝いていた。
10mほどの高さに、
かなり明るい光があった。
懐中電灯を点灯し梢を照らすと、
突然明かりが消えた。
「何だ今のは」
「化け物か」
「何かの発光現象か」
「あれを見ろ」
誰かの叫びが聞こえた。
彼の指さす方向、
川に沿って20mほど下流。
今迄梢で輝いていた光がそこにあった。
光は凄い早さで川を下るように移動し、
やがて見えなくなった。
光の大きさは20cmほど、
丁度ヘッドランプの光のような色だった。
あれから随分時がたつが、
あれが一体何だったのか未だに判らない。