若い頃、仲間たちと星を見に山に登った。
松の木の枝の下にテントを張り、
星を見るのもそこそこにお喋りに花が咲いていた。
そんな中、一人の女の子だけがまったくしゃべらない。
「具合でも悪いの?」
と問うが、その子は何も答えず、
隣にいたその子の友人が代わりに
「あ、き、気にしないで。大丈夫だから」
と、なぜかあせって答えた。
翌朝、その子に
「ゆうべはどうしたの?」
と聞くと、
「木が生い茂った奥の方から、
お神楽が一晩中聞こえてたんです」
と答えた。
その子の友人曰く、
彼女は『見える人』なのだそうだ。
下山前、気になって彼女が言っていた林の奥に行って見た。
少し歩くと開けた場所があり、
地面にはお社の跡らしき礎石が並んでいた。