ダークモード

【洒落怖】我が家にいた黒猫

60

9

0

  • 30年近く前…
    思えば俺が物心ついた時から我が家には黒猫がいた。

    すでに成猫で、
    目の色はゴールドというか、
    どこにでもいる黒猫。

    メスで、尻尾が長く、
    歩くときはそれを立てて優雅に振っていた。

    俺が小学校から戻るといつも玄関先にいる。

    『おかえり』のつもり(?)なのか、
    ニャ~と短く鳴いて俺の顔を見上げてた。

    黒猫は賢くって人なつっこいとよく言われるけど、
    例に違わず人によく慣れていた。


    それと、猫は空気が読めるとも言うけど、
    人との距離の取り方も絶妙だった気がする。

    例えば7、8歳頃の記憶だけど、
    友達とケンカして機嫌を悪くして帰宅すると近寄ってこない。

    でもアニメか何か見て機嫌が直ると、
    いつの間にか俺の隣で寝ている。

    頭をなでてやると、
    俺の膝の上に乗りグルグル喉を鳴らす。

    「くーたん…」

    と名前を呼んで抱き上げると、
    俺の耳元をペロペロ舐める。

    グルグル喉を鳴らして、小さな鼻息、ざらざらの舌の感触、
    リアルに今でもはっきり覚えている。

    親から叱られてベソかいてると、
    微妙な距離をとってそばで心配そうにしてるとか、
    覚えているシーンも数年間にわたっていくつもある。

    2つ下の妹も黒猫をかわいがった。

    何かの包装用の赤いリボンで首輪を作り、
    黒猫につけてあげていた。

    俺「ゆったりめにつけてあげないと、くーたんが苦しいよ」

    妹「うん、わかってる」

    この会話もリアルに覚えている。

    小5の時に親父の仕事の都合で引っ越した。

    ところが、
    この時期を境に俺の黒猫の記憶が途絶えている。

    引っ越しや転校、新しい友人と知り合い遊び、
    いろいろあったから印象が薄くなったのか、
    引っ越し先がペット禁止で親が知り合いにでもあげたのか…

    中学、高校、大学、
    黒猫のことはその後も時々思い出したけど、
    勝手にそう考え、一人で納得していた。

    今年の正月。

    俺も所帯を持って、妹も嫁ぎ、
    実家にそれぞれ家族を連れて集まる。

    実家に到着すると、
    妹一家もほぼ同時にやってきた。

    と、ふと隣の家の庭に目をやると、
    赤い首輪をつけた黒猫がいた。

    「くーたん…」

    ふと口をついて出た。

    妹もそっちを見て、

    「くーたん、私も覚えてる。
    おとなしくてキレイないい猫だったよね」

    と懐かしそうに言った。

    年始の挨拶をしてテーブルを囲む一族。

    おせちとお酒で話しも盛り上がる。

    俺はふとさっきの黒猫を思い出して、
    親父とお袋に尋ねた。

    「そう言えば、
    ○○町(黒猫の記憶がある時期に住んでたところ)から引っ越す時、
    くーたんどうしたんだっけ?
    誰かにあげたんだっけ?
    一緒に引っ越したんだっけ?」

    不思議そうに顔を見合わせる両親。

    親父が、

    「…なんだ、そのくーたんって?」

    俺が、

    「はいはい、とぼけなくていいから!
    黒猫のくーたんだよ。
    …あ、ひょっとして捨てた?
    もしそうだとしても
    今更気にしないからどうしたか教えてくれよ」

    と言うと、
    妹も話題に乗っかってきた。

    「そうそう、私も気になるし!
    くーたんのその後!」

    そしたら親父が意外なことを言い出した。

    マジメな顔で

    「オレが猫嫌いなの知らないのか?
    オレは結婚してから猫はもちろん、
    何の動物も飼ったことはないぞ」

    今度は俺と妹が顔を見合わせる番だった。

    「絶対、そんなことない!
    抱いた感触、喉を鳴らす音、全部覚えてるし!」

    「そうそう!
    いつもリビングの床で寝てたじゃない!」

    俺と妹が口々に言うと、
    親父はからかわれてると思ったのか、
    ちょっとムッとしたような顔をした。

    お袋が見かねて呆れたように口を挟んだ。

    「○○町のアパートはペット禁止だったよ。
    飼えるわけないでしょ」

    絶句した。

    両親の顔を見ると
    とてもウソをついているようには思えなかった。

    妹も混乱しているようだったが、
    何かを思いついたように

    「兄ちゃん、アルバム!昔のアルバム!」

    そうだ、親父は昔からカメラが趣味で、
    俺と妹の成長記録の写真は山ほど実家にある。

    1枚でも写っていれば、
    勘違いしているのは両親の方とわかる。

    屋外の写真には目もくれず、
    部屋の中で撮った写真を片っ端からチェックした。

    それでも100枚以上はあったが、
    全部見終わって背筋が寒くなった。

    本当にくーたんの姿は、
    1枚の写真にも写っていなかった。

    妹も顔色が変わっていたが、
    それでも

    『自分は小さかったから、何か勘違いしたんだろう』

    と、自分に言い聞かせているようだった。

    だが俺の方は、
    引っ越し当時10歳を越えていた。

    他の記憶は全部ほぼ正確なのに、
    なぜ黒猫だけ混乱(?)しているのか?
    (しかも小さい子供とは言え、妹という証言者もいる)

    絶対ぬいぐるみとかじゃない、
    重み、感触、音、匂いまでリアルに覚えている。

    毎日玄関先まで迎えにきて、遊んでくれた、
    あの黒猫は何だったんだろう?

  • ツイートする

  • この話は怖かったですか?

    怖かった9

  • コメント

  • コメントはまだ投稿されていません
      我が家にいた黒猫 についての感想や真相の解明など自由にコメントしていってください。お待ちしております。
    • 名前(省略可):
    • 本文:

    • 半角文字列だけの入力はできません。
  • この話を読んだ人はこちらも読んでいます

  • ※既読の話はオレンジ色の下線が灰色に変わります

  • ここで突然心霊写真クイズ!

New

新着コメント