【洒落怖】封印された記憶

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  • 記憶を無くした人間は
    ふいに記憶を取り戻した時、
    記憶をなくす直前の行動をとる。
    この文を読んだ時、
    俺はあることを思い出した。
    先輩は8才の夏、
    一ヵ月ほど行方不明になった。
    誘拐されたと思った先輩の親は、
    警察に捜索願いを出した。
    一ヵ月後、先輩は警察に保護された。
    が、先輩には一ヵ月の間の記憶が抜けていた。
    住んでいた場所からかなり離れていたことと、
    一ヵ月の間何を食べていたのかわからないが、
    健康状態は良好だったことから、
    やはり何者かに誘拐されていたのだろうという結論にいたった。

    先輩には彼女がいた。
    知り合ったのは大学に入ってかららしいが、
    入学して間もなくつきあい始めたらしい。
    冗談で先輩の彼女に、
    「先輩のどこを好きになったんすか?」
    と聞いたら、
    「わかんない」
    笑いながら答えてくれた。
    サークルの夏合宿は、長野県に決まった。
    長野に決まったのは先輩の意向だった。
    夜、みんなで怪談話に盛り上がっていた時、事件は起きた。
    先輩の彼女が何かに憑かれたように
    けたたましく笑いだした。
    笑いながら
    「あの夏…」
    と繰り返している。
    先輩は彼女をなだめていたのだが、
    急に棒立ちになり、顔つきが変わった。
    両手を前につきだしている。
    細かく手が震えた。
    「また私を殺すの?」
    先輩の彼女がつぶやく。
    「お前は死なない。死ななかった。死んでいたのに。」
    言いながら先輩は彼女の首を締め始めた。
    彼女が狂ったように笑う。
    先輩の目は血走っている。
    俺たちは目の前で行なわれていることに、
    しばらく反応できなかった。
    彼女の顔が青ざめていく。
    「何やってんですか!先輩」
    誰かが叫んだ。
    それを機に数人が先輩を止めに入った。
    それ以来、先輩は学校に姿を現さなくなった。
    先輩の彼女は学校を辞めた。
    あの夏合宿の事件のことは全く覚えてないらしかった。
    「死ななかった。死んでいたのに。」
    先輩のこの言葉が、ずっと引っ掛かっている。
    今となっては、真相を知ることはできないが、
    あの時先輩は全てを思い出したんじゃないかと思っている。

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