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ダークモード

【じわ怖】霊感覚醒

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  • 学生時代に、
    仙石線沿いのアパ-トを借りた事があります。

    同期の奴と二人で同居をしていた僕は、
    ここで一生忘れられない経験をしました…。

    校内の規則に依る一年の学生寮住まいを終えて、
    晴れてアパ-トに移ったばかりの、
    忘れる筈もない、四月十日の晩の出来事です。

    夜中に、妙な夢を見て目が覚めました。

    夢の中で眠る我々二人を、
    ベランダのカ-テンの陰からジッと見ている者がいるのです。

    薄暗くて顔は見えませんが、
    その姿はハッキリとわかり、
    僕は布団の中で呼吸を整えました。

    「こんの野郎…とっ捕まえてやる…」

    不思議と恐怖感はなく、(夢の中だからか)
    機を狙ってとび起き、「誰だ!」と叫ぶと、
    カ-テンを払いのけるように開けました。





    勢いよくカ-テンを開けようとした僕は、
    ベランダに無造作に並べておいたペットボトルを蹴ってしまった。

    「カラカラ-ン!!」

    二階にある我々の部屋のベランダから落ちたボトルが、
    アスファルトの上で跳ねた。

    思わずその音の方向を見ると、
    黒い人影が走りゆく姿が見えた。

    「逃げられたか…」

    そう思ったところで目が覚めた。

    隣の布団を見ると、
    同居人が間抜けな顔で眠り呆けていた。

    変な夢を見たものだな、と思いながら時計を見ると、
    寝付いてまだ一時間半。

    まだまだ充分、寝直す時間はあった。

    さあ、またグッスリ寝よう、と思ったその時、
    恐怖との対面の瞬間は、突然やってきたんです。

    明らかに誰かから見られている。

    それがハッキリとわかるんです。

    それは視線を感じるとかいうレベルではなく、例えて言えば、
    生命を維持しようとする僕の本能に、直接触れられたような恐怖。

    視覚でも聴覚でも感じ取れないものを、
    感じてしまった瞬間でした。

    二十歳の誕生日を向かえたばかりの僕でしたが、
    それまで霊感など感じた事もなく過ごして来た。

    それがこの日この瞬間に、いっきに開花したんです。
    (事実、この晩以来、僕は様々な霊体験をする様に)

    搾りあげられるような恐怖に、
    鼻の奥から目頭にかけて突き抜けるような感覚が走り、
    顎は僕の意志ではない力で、
    グラグラガクガク揺れました。

    「うぉあぁあああ-」

    その瞬間は理性などなかったのでしょうが、
    無意識に隣で寝ている同居人を揺り起こしていました。

    「おい、起きろ、おい!」

    何も知らずに寝入っていた同期はキョトンとして、

    「ん?どした…」

    この時程、
    誰かと言葉を交わす事に安らぎを感じた事は、
    今まで無かった事だと思います。

    ひと言同期の声を聞いただけで僕の恐怖は半減し、
    ゆっくり、今夢を見て目覚めたところから、
    得体の知れない恐怖感を感じた事まで言い終えると、
    すっかり気持ちが落ち着いていました。

    「まあ、また何かあったら起こせよ。俺は寝るぜ…」

    「ああそうだな。悪かったな、起こして」

    そんな会話を最後に、
    同期は直ぐにまた眠りに入ってしまいました。

    「気のせいにしてはスゴかったな…」

    そう思い返すとなんだか、
    あれ程怖がってしまった自分に照れさえ感じながら、
    自分も布団に入り、視線を上に向けたその時、
    ソイツと眼が合ったんです。

    この話には随分ちゃちな脚色がされて、
    しばらくの間、我が校の後輩に伝わったみたいで、
    自分自身、直接後輩から聞いた事があります。

    最初は、
    まさか僕がその当事者であるとは思わずに話してたみたいですが、
    そんなふうに後輩の間には伝わっているんだな、と思いました。

    でもこの話しは、
    下手な尾ひれなど付けなくても充分というか、
    むしろ脚色してしまう事でリアリテイがなくなっているなと。

    本人である自分としては、
    どうしてもそう思ってしまいます。

    僕と同居人が寝ていた部屋には押入があり、
    その押入の上方に縦が40cmくらい、
    横幅が襖幅の収納スペ-スがありました。

    押入に足を向ける形で寝ていた僕達は、
    仰向けになって眼を開くと、
    自然に押入の上の収納スペ-スに視線が向くんです。

    そして、その中にソイツはいたんです…

    たった40cm程しかない高さに平べったくなって、
    胡座をかいて腕組をして、ジッとこちらを見ている。

    痩せスギの身体にはアバラがうきでて、
    やたら手足だけが長かった。

    不思議なのは、(ここまででも不思議ですが)
    そこの収納スペ-スの小さな襖は閉まっているのに、
    その姿がハッキリ見えるんです。

    サ-ッと血がひくという表現をよく聞ますが、
    この時は、自分の体温が急激に冷えていくような感じがしました。

    大声で叫ぶような種類の恐怖ではなく、
    妙に冷静に頭の中で、

    「そんな筈はない、そんな理由はない」

    と、目の前の現実を懸命に否定しました。

    そしてガバッと布団をかぶって、
    ギュッっと眼をつぶったんです。

    でもそれでも尚、
    ハッキリとソイツの姿は見えるです。

    まるで襖も布団も僕の瞼もなくなってしまい、
    いや、部屋そのものも消えてしまったかのように、
    僕とそいつだけが空間に存在しているかのように…

    覚えているのはここまです。

    後から思えば僕は気を失ったのだと思います。

    次の日の朝は素晴らしい快晴で、
    何度も声をかけたという同居人に起こされて
    僕は眼を覚ましました。

    僕を形勢する細胞の一個々々までも眠っていたかのような、
    深い眠りでした。

    実際この朝以来、現在に至るまで、
    僕の人生の周囲には様々な不思議な出来事がありますから、
    そういう意味では生まれ変わったのかも知れません。

    あまりに深い眠りだった為か、
    現実として受け止めたくないという気持ちがそうさせるのか、
    僕は起こされた時点では、
    昨夜の出来事などまるで覚えてはいませんでした。

    「おい、お前、あれからは何ともなかったか?」

    「…何が?」

    「何がってお前…夕べお前、俺を夜中に起こしただろ。
    ほら、何だかおっかねぇ夢を見たとか何とかよぉ」

    同期の奴の言葉を最後まで聞かないうちに、
    一気に記憶がよみがえった時のあの恐怖は、
    今も忘れられないんです。

    高砂の駅を降りて、
    少し歩いてから踏み切りを渡ると、やがて道に突き当たり、
    そこを曲がったところに、ヒドク無愛想な店主のいる雑貨屋がある。

    そこの斜め向に、
    僕らのアパ-トはありました。

    あのアパ-トでの出来事は、
    あれから何度も繰り返し誰かに話をしたり、
    時間が経過していく過程で、
    自分の中でどんどんリアリティが薄れました。

    自分自身も今では、
    あれが事実であったのかどうかも確信が持てない程、
    記憶は曖昧になってしまいました。

    でも、間違いなく現実に体験した事なのです。

    同期と一緒に朝トレに向いながら、
    ふと気がついた事がありました。

    「そういえば押入の上の収納スペ-スって、
    覗いた事があったかなあ」

    少し気にはなったが、
    何かを考えながら出来るほど我が部の朝トレは軽くなく、
    しばしの間は、そのことから頭が離れました。

    朝トレからの帰り道、
    気になっていた事を同期に聞いてみた。

    「おい押入の上って、何が入ってるんだ?」

    「そんなの知らんよ。
    アパ-ト入る時に片づけたのはお前だろ」

    「そうだよな。
    じゃあもしかしたら、まだ一回も開けた事ないかもなあ」

    昨晩自分をジッと見つめていたアイツは、
    なぜあそこから見ていたんだろう。

    それまで気にも懸けた事のないあの収納スペ-スが、
    入居以来未確認だった事もあり、
    当然ですが、確かめられずにはいられなくなりました。

    アパ-トに戻ると、
    先ずは朝食の用意なのですが、
    その間に同居人である同期が、
    例のスペ-スを確認しました。

    「なんだこりゃあ」

    という同期のヤツの声が、
    台所まで聞こえてきたので、

    「どうしたぁ…」

    と、自分も押入のある奥の部屋に入ってみました。

    「ちょっと見てみろよ」

    「何だよ、何があったんだよ」

    同期が丸イスから降りたので、
    次は自分がイスにあがり中を覗くと、
    眼に入ったのは、
    黄色に変色した新聞に包まれた、
    大きな箱でした。

    スペ-ス一杯にギリギリおさまっている箱を見ながら、

    「何なんだろうな」
    「何が入ってるんだ」

    と、
    同期と二人で顔を見合わせましたが、
    意見は直ぐに一致しました。

    「とりあえずは開けてみようか」

    普段、紙に包まれた箱を開ける時などは、
    包装紙をビリビリに破ってしか開ける事のない自分が、
    この時は妙に慎重に、ゆっくりと包みを開きました。

    押入の上から下におろす時の手応えで、
    箱は随分しっかりしたつくりのように感じましたが、
    古新聞の中から出て来たものを見て、
    我々二人は一瞬息を呑みました。

    「仏壇だ…」

    一般家庭の仏間に置いてある仏壇に比べれば、
    ひとまわりもふたまわりも小さくはありましたが、
    その外観はどう見ても仏壇でした。

    「中を開けてみろよ…」

    「う、うん…」

    この時、この仏壇を開けるのが、
    自分ではなくて同期の方だったら、
    その後の展開は違ったのかもしれません。

    この日以来、
    身の回りでそれまではあり得なかった出来事が、
    次々と起こるようになったのは、
    どうしてもこの事がキッカケであるとしか思えないのです。

    しかし、自分が古新聞の包みを開けた流れもあり、
    仏壇らしき扉に手をかけたのも、
    やはり自分だったんです…

    この時、迂闊にも立てる事をせずに、
    仏壇を寝かしたままで扉を左右に開いてしまいました。

    勿論この時はまだ、
    それが後々自分の胸の中につきささって来る事になろうとは、
    思いもしなかったのですが…

    カチャッ…っと観音開きの扉を開けると、
    中央に寝かすように置かれている仏像と眼が合いました。

    その瞬間、一瞬その眼がカッと開いて、
    私をニラみつけたような気がして、
    身体がブルッとふるえました。


    「おぅわあぁああ!!」

    と大袈裟にふるえたので、
    同居人も驚いて「おぉ!」と声を出し、

    「おどかすなよ、どうしたんだよ」

    「ああ、悪い悪い…」

    そう言いながらゆっくりと、
    その仏壇ごと縦に立てて、
    仏像も中央に置いてみました。

    立てて見ると、
    その仏像は随分下眼使いで、正面からみても、
    先ほどのように視線が合う事はありませんでした。

    「それにしても、さっきはビビッたなあ…」

    何となくその場に居て空気が重くなり、
    台所に戻ろうと思い立ち上がりました。

    すると同期のヤツが仏壇の中をのぞき込んで、

    「ん、何か書いてあるなあ…」

    と言うのでその場にとどまり、
    書いてある内容を同期が読むのを待ちました。

    「ええっとぉ…
    『決シテ意ヲ合ワセヅ合ワサセヅ決シテソノ眼ヲ合ワセヅ合ワサセヅ』」

    背筋が冷たくなったなんてものではありませんでした。

    自分はもう既に眼を合わせるどころか、
    あの眼で睨まれてしまった後なんですから。

    普通に設置し、仏壇が立っている中央に置くぶんには、
    余程下からのぞき込まない限りは、
    眼が合う筈のない仏像でありましたが、
    横置きにして開いてしまったが為に、
    しっかりその眼で私を確認されてしまいました。

    しかし、だからといって、
    それがどうだというのか、
    何があるというのか、解りませんでした。

    その時はまだ、切り開かれた新しい感覚が、
    ほんのちょっと働き始めたばかりでしたから…

    それでも、そのほんのちょっと働き始めたばかりの感覚なりに、
    これから自分の身の回りに、
    何かしら異変が起こるような予感はハッキリとしました。

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