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ばーさんVS鹿
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短編2分
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ウチのばーさんは、 神奈川のある寺の参道脇で甘味屋をやっていた。 そのばーさんがまだちゃんと若かった時の話らしい。 その甘味屋には困った客が月一で来る。 鹿だ。 寺は山の中に在って、 その山からは今でも普通に鹿が降りてくる。 問題の鹿は決まった日時に来る訳ではないのだが、 大体月一で店の前にやって来ては、 店先にある土産物のタニシの佃煮をかっぱらっていったそうだ。 それに腹を立てたばーさんは、 今度来たらその鹿の尻でもひっ叩いてやろうと、 ホウキを玄関に置いて毎日を過ごしてた。 そんでもって鹿はその気配を察し切れずに、 夕方に普段通り佃煮を取りにきた。 ホウキを手に取り、鹿を追うばーさん。 袋詰めの佃煮をくわえ、 ばーさんから逃げる鹿。 一人と一頭は参道を駆け下りが、 麓の橋の手前でばーさんは鹿にまかれた。 まだ近くに居るかもと、 ばーさんは辺りを探してみると、 橋の近くにある神社の鳥居の内側に、 佃煮の袋が中身ごと捨ててあった。 ばーさんは袋を店頭に戻すか迷ったが、 鹿のヨダレまみれになっていたので、 お賽銭替わりに賽銭箱の上に置いていった。 次の月も鹿は来て、ばーさんは追った。 そしたら、また神社の中に捨ててあった。 もしやと思い神主さんに聞いてみると、 毎月鳥居の内側に佃煮が捨てられていたそうだ。 「鹿は多分、お賽銭替わりに佃煮を供えていったんだろうけど、 供えるんだったらウチの佃煮じゃなくて、 山の木の実にでもしてくれればいいのに」 と、ばーさんは笑ってこの話をしていた。
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