【洒落怖】お堀の防空壕

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  • 子供の頃のある夏の話。
    僕の実家ってのが、戦時中は軍需工場のあったところで、
    何度か空襲に見舞われた町なんです。
    だから古い建物とかまるでなくて、のっぺりしてつまらないとこなんだけど、
    まぁそういう空襲の過去があったせいか、
    心霊スポットというか「出る」って言われてるところが結構ありました。
    それで、うちのお婆ちゃんとか本気で
    「あそこには近づくな」
    って言うんですよ。
    でもそんな事を言われると、そこに行ってみたくなっちゃうんですよね。
    で、お婆ちゃんが特に「行くな」って言ってたところが、
    昭和に再建されたお城のある公園で、
    あちこちに慰霊碑とか建ってて、夕方になると確かにちょっと無気味でした。
    お城だからお堀があるんだけど水はもう涸れてて、
    戦時中はそのお堀に横穴を掘って防空壕にしてたそうです。

    なんでもその中のどれかで近くに焼夷弾が落ちて、
    避難した人はいぶり殺されたらしい。
    それとは別に、工場に駆り出されてきた人をリンチして
    そこに埋めたという話もありました。
    まぁどこまで本当かわからないんだけど、
    お婆ちゃんが言うにはその霊が出るって言うんです。
    親父なんかは「デマだ」ってまるで信じてなかったし、
    僕も聞き流してましたけど。
    で小学生の頃の話、7月も終盤のある夕暮れ、
    飼っていたジャーマン・シェパードのタローを連れて、
    その公園に散歩に行きました。
    まぁ通常の散歩コースだったんですけど。
    お婆ちゃんの言うことをまるっきり信じていなかったわけでもないけど、
    そのお堀の中って普段、背の高い雑草で覆われてたから、
    防空壕なんてあるのかどうかもわからないし、
    まぁ寸止めのスリルを楽しんでたという感じです。
    で、件のお堀の近くに行くと普段と雰囲気が違いました。
    雑草が刈り取られてるんです。
    それで、ちょっと探検、と思ってお堀に降りてみる事にしました。
    元々、夕方頃には人がいなくなる公園の、
    真っ暗なお堀に降りるのはスリリングでした。
    でっかい犬と一緒だったから、そんな事ができたんだと思うんですが。
    しばらくして暗がりに目も慣れてきて、じめじめしたお堀の中を歩きだすと、
    あちらこちらに防空壕らしき穴がありました。
    意外に小さくて、入口は板などを打ち付けて塞がれています。
    ドキドキしながら見て歩くうちに、
    一つ入口に何も打ち付けてない壕がありました。
    そこをのぞき込もうとした時、突然雷が。
    吃驚しました。
    そのあと大降りの雨、夕立です。
    雷が鳴った途端、タローがその壕に駆け込んで、
    力の強い犬なもんだから僕も引っ張られ壕の中へ。
    タローはすっかり雷に怯えている様子でした。
    こういう時は梃子でも動きません。
    外は土砂降りになってたし、
    なんとなく基地を見つけた気分で雨が止むのを待っていたんです。
    壕は高さ1mくらい、奥行きは3mくらいのところで
    支柱の木が腐って半分くらい崩落していました。
    そのうちタローが何か気配を感じとった様子で
    奥をじっと見つめはじめました。
    で、僕も冒険心を起こして崩落した先を覗き込むと、誰かいたんです。
    暗くて見えなかったけど、確かに。
    僕はパニックを起こして、気がつくと雨の中をずぶ濡れになって
    家に向かって走っていました。
    後からついてくるだろうとその時は思ったんですが、
    その日タローは帰ってきませんでした。
    翌日の昼間、公園にタローを探しに行くと、
    お堀の中に八つ裂きのタローの死体がありました。
    親父は
    「こんな大きい犬がなぁ」
    と首を捻っていましたが、
    「浮浪者か野良犬の仕業だな」
    と僕に言いました。
    防空壕の事は叱られると思って親には言いませんでしたが、姉に話したら、
    「中にいたの、野良犬かモグラなんかじゃない?」
    って受け流されました。
    それから…、同級生にこの話をしたら、
    「○○が祟りにあった」
    と噂が拡がってしまいました。
    夏休みも終わりに近いある日、そこに冒険に行くから案内しろ、
    と近所のDQN兄弟に呼ばれました。
    兄は中学生、弟は僕より一つ上の小学6年生、
    1年前に引っ越してきたのでした。
    逆らうと何をするかわからない奴らなので、
    言うことを聞かざるをえません。
    「犬の敵をとってやるよ」
    とか何とかエアガンを構えて言ってましたが、
    タロー目がけて、そのエアガンを撃ちまくったのは誰なんだよと思いました。
    お堀のそばまで来ると、夏の雑草は生育が早い、
    既にお堀は再び雑草で覆い尽くされていました。
    「話が違うじゃねぇか」
    僕は二人に嘘つき呼ばわりされて、必死で説明をしました。
    「前は草が刈ってあって、普通に降りていけたんだって!」
    こいつらに目をつけられたら堪らない。
    奴らは名残惜しそうにエアガンを撃っているうちに、
    弟の方がお堀の下に駆け込んでいきました。
    こうなると兄貴の方も降りない訳にはいかないんでしょう。
    続いて駆け下りて
    「場所を教えろ」
    と怒鳴ります。
    お前も来い、と言われましたけど、
    僕は上からおおよその位置を教えて、
    「場所は教えたから帰る」
    と二人を置いて帰りました。
    DQN兄弟も嫌だったけど、もう二度と近寄りたくなかったから。
    その次の日の夜、DQN兄弟のお母さんが
    「ウチの子が戻らないんだけど知らないか」
    と訪ねてきました。
    深夜徘徊は常習的な兄弟だったので
    一晩くらいは気に留めなかったんでしょうが、
    二日目になると家出等を心配したようです。
    僕は、昨日の夕方までは公園で一緒だった事は教えました。
    でもお堀の事は黙っていました。
    正直、
    「あ、奴らやられたな」
    と思っていたんです。
    そしてその数日後、お堀の草むらでDQN弟の死体が見つかりました。
    DQN兄は行方不明のまま。
    弟の死体にはエアガンの玉の痕がいっぱいあったという噂が流れ、
    DQN兄がDQN弟を殺したのではないかとか言われてました。
    そのうちDQN兄弟の家族もいつのまにか引っ越していき、
    僕も最初は色々と訊かれましたけど、
    防空壕跡の事は黙っているうちに騒ぎは治まっていきました。
    以来、お堀の側にはもう近づかないようにしていましたが、
    今夏、帰省した折りに好奇心が涌いてきてしまい
    見にいってみたら、お堀は埋め立てられて、
    あの防空壕跡があったとおぼしき箇所には小さなお社が祀られていました。

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