\"大口ヨッちゃん\"が後から来たせいもあって、それとはなしに俺は彼を見ていたが見ればみるほど不思議な顔立ちだった。
尖った小さい鼻、黄身がかった大きな瞳、大きな耳…
およそ日本人らしくない。
かと言ってどんな人種だとも断定できない不可思議な顔立ちだった。
そしてアダ名にもなっている薄く大きな口の、本当に大きな事。
華奢だけどどこか獰猛、そんな印象だった。
しばらくして、明日も早いからと\"大口ヨッちゃん\"は帰っていった。
それを機に俺も、俺も、と客たちは三々五々帰っていき父と、旧友数人と、家主の大叔母が残るだけになった。
なんとなくちゃけた雰囲気の中で、父の旧友の一人が俺に
「なあ息子くん、\"大口ヨッちゃん\"て変わった奴だろ?」
と問いかけてきた。
「やめなさいって」
大叔母が制止するが旧友は構わず続けた。
「あいつ、人間じゃないんだぞ」
しばしの妙な静寂。
別な旧友が話を継ぐ。
「歯医者に行ったら、こんな造りの歯は見た事ないと医者に言われたって、本人が言ってた」
話はこうだ。
父たちが幼い頃、ある幼なじみが病死した。
その子の父親はろくでなしで、その子が生まれる前に姿を消していた。
その子の母親は子供の死に半狂乱になり、集落のはずれにある池に身を投げた。
たまたま通りがかった者によって母親は救助されたがいつまた自殺するかも知れない。
そこで彼女と親しかった大叔母が彼女の家に泊まり込み世話をしたのだそうだ。
ある夜、大叔母が妙な気配に起きだしてみると家の前に、泥まみれの赤ん坊が寝ていた。
母親が身投げをした池は××様と呼ばれる、神がかった存在がいるとされている池だった。
見れば赤ん坊もどこか人間離れした風情。
これは母親を憐れんだ××様が授けてくれた子供かも知れない…
とは言え翌日、警察に報告はしたそうだが…
しかし一向に本当の親は見つからず赤ん坊はしばらくどこかの施設に預けられた後、母親の希望もあって養子として戻って来た。
それが\"大口ヨッちゃん\"なのだと。
風変わりな風貌でからかわれる事もあったらしいが、ヨッちゃんは持ち前のヤンチャさで周囲ともすっかり馴染み、今では農協の要職に就き、奥さんと娘さんもいるとの事。
「まったく馴染んでたから気にもしねぇけど、××様の血ぃ引いてるかも知れねーんだよなアイツ…」
父が遠い目でつぶやいた。
「何だろうとヨっちゃんはヨッちゃんでしょ!いい加減におし!」
大伯母が叱りつけるようにそう言って飲み会はお開きに。
今でも正月になるたび、実家には\"大口ヨッちゃん\"からの年賀状が届いている。
孫も出来、たいへん幸せであるらしい。
九州の方言に疎いのでセリフは再構成しました。
バレ防止の為、いくつかの固有名詞を伏せ字にしました。
ヨッちゃんも仮名です。
因みに、ヨッちゃんはよくよく見ればかなり変わった風貌だと分かりますが知らずにすれ違っても「口でけぇ」程度かなと思います。" />

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【洒落怖】大口ヨッちゃん

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