【洒落怖】看護婦寮

  • もうすでにその寮は取り壊されているし、
    かなりの年月も経っているので文章にしてみました。

    いまだに当時の細部まではっきりと覚えています。

    私の人生の中でこのような体験はこの1回のみです。

    もう経験したくはありません。

    当時23歳。

    当時、私はフリーターでお金がなくなるまで遊んで、
    金欠になるとアルバイトしてという生活をしてました。

    しかしある時、世間では入学、入社シーズン。


    このままこんな生活してていいものか?
    と思い、正社員として安定した収入を求めました。

    運良く知り合いに食品会社の社長を紹介してもらい、
    待遇も良かったし、コネで入社することが決まりました。

    さっそく来月から働いてくれとのこと。

    しかし、今、住んでるアパートから
    車では環7の朝の大渋滞で通勤不可能。

    電車はあまり好きではなかったので
    会社の近くでアパートを借りることにしたんです。

    しかし、いい物件が見当たらない。

    それは会社が都心の割といい場所にあるためで
    汚いアパートでも家賃9万。

    そんなに払えませんでした。

    就職先の会社の社長とたまたま会話する機会があって、
    そのとき、通勤時間のことやアパートのことを相談したんです。

    そしたら社長が

    「職場の近くにあるうちの工場の拡大予定地に、
    古い元看護婦寮があるから取り壊しまでの4ヶ月は住んでていいよ。
    いま1階は倉庫代わりに使っているけど、2階は人が住めるから。
    電気と水道は通ってるからどうにかなるだろう」

    と。

    タダそして車も止められるということで
    喜んでそこに決めました。

    なによりいくら騒いでもそこに住んでるのは私1人。

    苦情を言う人がいない。

    友達を呼んで宴会ができる。

    そしてさっそく次の日にそこへ行ってみました。

    広い敷地内にひっそりとある
    外見は古い寂れた施設といった感じ。

    壁に広がるヒビが時代を感じさせる。

    これでは看護婦さんも住みたくはないだろう、
    などと考えつつ中に入ってみると
    中身は結構きれい。

    しかし埃が溜まっていて、
    会社が倉庫として使っているわけでなく、
    ただの物置として使っているのがわかる。

    きっと、ここは寮として使われる前は
    公共の施設であったのではなかろうかといった作りでした。

    ガスが来てないから風呂には入れない、
    キッチンは各部屋に小さいのがついてるから
    食堂などは掃除の必要なし、などと考えながら、
    さっそく2階に上がり部屋の確認。

    部屋数は25。

    廊下と各部屋の内装はどこも綺麗。

    私は正面道路側の角部屋にきめました。

    それは日当たりがよく、
    畳と壁が新しい物だったからです。

    その日は自分が決めた部屋と2階の廊下、
    階段を掃除して帰りました。

    私が住んでいるアパートはまだ契約期間内でしたが、
    すぐにでも引っ越したいと思い、
    暇な友人2人組みに連絡をとり、
    明日の引越しを手伝ってくれるという約束をとり、
    布団に入りました。

    しかし一睡もできませんでした。

    それは一晩中いままでに経験のない耳鳴りと頭痛に悩まされていたからです。

    そして翌日、
    約束の時間になっても友人は現れませんでした。

    約束の時間から1時間ほど過ぎたころ電話があり、
    それは友人からでした。

    病院からでした。

    話を聞けば、昨日深夜、
    今日ここに来るもう1人と車で移動中に気分が悪くなり
    運転に集中できなくなり、壁に衝突したとのことでした。

    怪我はたいしたことはなかったらしいのですが、
    引越しを手伝ってもらえなくなったことで動揺して、
    初めの異変に気づきませんでした。

    家具といっても大きな物はベッドとタンスのみだったので、
    すべて分解してひとりで車に乗せ、私の車はワゴンでしたが、
    4往復でなんとか自力で家具などを運び終えたときには、
    すでに夕方5時でした。

    それから荷物を自分の部屋に運び入れ
    家具などを組み立てて、
    とりあえず引越しが完了したときには
    昨日寝ていなかったため、
    すでに体力の限界に達していました。

    食事も取らずに倒れるように横になり
    深い眠りに入りました。

    それから何時間経過したころでしょうか。

    深夜、苦しくて息が出来ない。

    何か重い物が体の上に乗っているような感覚。

    だるくて体も動かない。

    きっと疲れているからに違いない。

    引越しで精神的にも肉体的にも疲れているのだと考え、
    また深い眠りに入りました。

    そして朝を迎え、
    胸に痛みがまだ残っているのは、
    家具が重かったための筋肉痛だと考えることにしました。

    その晩、
    友人宅で夕食とシャワーを済ませて、
    深夜に寮に着きました。

    しかしあのなんとも表現しにくい不気味さ。

    正面玄関の厚いガラスの引き戸の奥に
    別世界が広がっているような。

    そのガラスに映った自分は
    その世界に閉じ込められてるようだった。

    しかし、2階には自分の部屋があるし
    外にいてもしかたないので、
    突き進み階段を登って自分の部屋の正面へ。

    なぜか怖くて
    自分の部屋のドアを開けることが出来ない。

    普通なら何もない廊下に一人で立っている方が怖いと感じるのでは。

    結局、部屋に入っても何も起こらなかった。

    明日からは玄関や廊下は
    電気をつけっぱなしにしておこうと考えながら寝ました。

    しばらくして、また昨日と同じように
    胸を何かに押されている感覚で目が覚めました。

    それも規則的に胸の上方、下方と交互に。

    しかも昨日と違うのは、
    どこからか低いうめき声のようなものが聞こえる。

    目を開いてなくても
    確実に誰かが部屋の中にいるのがわかる。

    怖くて目は開くことはできない。

    すでに金縛りで体を横にすることもできない。

    ただ、耳から聞こえる音と方向、
    胸から伝わる何かの重さだけで答えが出た。

    音は明らかに人の声。

    それも二人。

    一人は、お経を読んでる。

    もう一人は、
    はっきり聞き取れない独り言。

    胸に掛かる重さは
    声の方向と移動でその二人が並んで交互に、
    上下移動しながら
    私にしかも正座で乗りかかっているというものです。

    この結論に達したと同時にますます重くなってきて、
    思わず目を開いてしまいました。

    そこにいた者は
    胸の上で横に正座をしている髪の長い女性でした。

    そして天井方向に移動して浮いている老婆でした。

    私が目を開けたのに気づいてか、
    その二人が私を睨み付けます。

    そのあまりの形相に二度と目を開けるまいと。
    そしてその重さに耐えるしかありませんでした。

    二人が居なくなったと同時に
    私も疲れて寝てしまいました。

    気絶といったほうが正しいでしょうか。

    次の朝、
    私は昨晩のことなど無かったかのように
    普通に目覚めました。

    しかし胸に痛みが残っていて
    シャツを捲って確認すると、
    そこには横に4本のアザが残っていました。

    それを見て、
    すぐに現実に戻されました。

    財布と車のカギと上着だけを持って
    何も考えずに外に飛び出しました。

    私の友人関係の中には
    このような体験をしたことのある人はいなかったので、
    相談できる人はいなかったし、
    そのまえに本当に現実なのか?

    昔からの友人が集まってくれて、
    興味本位からなのだが、
    みんなで私の部屋にその夜は泊まる事になりました。

    私をいれて8人でした。

    みんなで酒飲んで怪談話して、
    気が付いたらいつの間にか私は寝ていて
    朝になっていました。

    みんなは3時ごろに寝たそうです。

    彼らにも何も起こりませんでした。

    ここに一人で残っていても怖いので
    わたしもみんなと一緒にでました。

    夜まである友人と二人であの夜のことを話し合い、
    私が疲れていて夜に苦しくなり、
    想像が錯覚を見せたと結論がでました。

    そして今夜、
    一緒に部屋に泊まってくれることになりました。

    部屋で酒を飲み、
    そのうち二人とも寝てしまいました。

    深夜に息苦しさで目覚めました。

    あの夜と一緒でした。

    すぐに隣に寝ている友人を起こそうと思ったがすでに遅く、
    体が動かない。

    また声が聞こえ、
    すぐに私の胸に乗ってきたのがわかりました。

    しかし、今夜は少し違いました。

    一人でした。

    声で髪の長い女性の方と分かりました。

    隣に友人が寝ているし
    前回ほどの恐怖はありませんでした。

    私は目を開け、
    私を睨みつけてる女性を睨み返していました。

    ふと隣に寝ている友人を見てみると
    老婆が彼の上で上下に移動しています。

    友人は目は閉じていたけれど、
    顔は恐怖で引きつっていました。

    朝、友人に起こされて
    すぐにここを出ようと真っ青な顔でいわれたが、
    しかし、なぜここだけ壁紙と畳が新しいのか疑問であったため、
    部屋を見回してみました。

    友人は一人で廊下に出るのも怖いらしかった。

    まず、畳の上に家具を載せた形跡がない。

    この部屋は角部屋で日当たりもよく
    空き部屋になるはずもない。

    移転が行われるのに
    畳を新しい物に取り替えるか。

    このとき私は軽いノイローゼになってたのかもしれない。

    すぐに友人に手伝ってもらって
    家具を廊下に出して、畳をすべて剥がしました。

    コンクリートの床はきれいでした。

    しかし中心だけが円形に拭かれていました。

    明らかに人の手によってそこだけが。

    その拭かれている中心には、
    よく見ると黒い何かがそこにあったことがうかがえました。

    それはきっと血液でしょう。

    すぐにそこを飛び出し、
    もう二度とそこに戻ることはありませんでした。

    その後、引越し業者にカギを渡して
    荷物だけは運び出してもらいました。

    後味が悪く就職も断りました。

    決して、その敷地に入ることはありませんでした。

    そこで昔になにがあったかなんて、知りたくもないし、
    興味もないです。

    わたしにとってやっとこの事件が過去のことになったと、
    感じたので書かせていただきました。

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