【洒落怖】忌み辻

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  • 地名は伏せさせていただくが千葉の実家での話。
    その四つ辻は見通しもいいのに
    事故多発の悪い意味での名所だ。
    これまでに何件も大小さまざまな事故が起こっている。
    電柱などはもう何本も取り替えられている曰く付きの交差点。
    その交差点は古くから存在し、周囲の人は「忌み辻」と呼んで
    その交差点を渡るときも、そこを通過しなければ行けないときも
    みな慎重になると言う。
    俺が去年の盆に帰省したときの話をしようと思う。
    車で帰省した時、
    丁度その交差点を通らなくてはいけないはめになった。
    他の道が混んでいてそこしか選択肢がなかったのだ。
    当然、母も父もその交差点の話は知っていたし、
    俺も知っていた。

    運転を父に変わり(俺はへぼドライバーです)
    気をつけながらその交差点に道を進めた。
    非常に蒸し暑く、車内はクーラーを
    がんがんに効かせていたので涼しかったが
    急に母が「寒いからクーラー消して」と言い始めた。
    「なんで?めっちゃ暑いよ外は。ほれ」
    と俺はウインドウを下げた。
    夏の熱気と蝉の声が飛び込んでくる。
    「あ、そうね。K(俺)急いで閉めて。暑い」
    車内は元通りに涼しくなったが、
    母はしきりに寒い寒いと言っていた。
    まぁ母は冷え性だから。
    でその場は済まして実家へ到着。
    スイカやら麦茶やらで一服して
    仏壇に線香を上げて墓参りに行く準備に忙しかった。
    盆の供養も終わって、
    親戚一同寺でお茶なんかを飲んでさて帰りましょうか
    と言う塩梅になった。
    空は夕立でも来そうなぐらい
    でかい入道雲の頭が潰れ始めていた。
    「あ、こりゃ一雨くるな。K、お前先に歩いて戻っとけ。」
    「へ?」
    「父さんS叔母さんを家まで送るから。」
    と無茶なことを言う父。
    まぁ確かに実家は寺からそんなに離れてはいない。
    歩いて2~30分だ。
    俺は愚痴垂れながらも
    渋々歩いて実家に帰るはめになった。
    空はいまにも泣き出しそうだったので、
    少し歩みを早めて実家へと急いだ。
    黒い喪服が暑さを倍増させ、服自体が重く感じた。
    蝉の声は雨を察知したのか聞こえなくなっていた。
    熱気を吐き出すアスファルトの上をせかせかと歩く俺。
    もう日の光は無く、厚い雲に覆われていた。
    もういまにも泣き出しそうな空模様は
    不安と焦燥感を加速させるには充分だった。
    それにしても喪服は重い。
    扇子を取り出してはたはたとあおぎながら足を速める。
    「そういえばこの道って、忌み辻に入る道だよな。やだなぁ。」
    確かにその道は忌み辻から延びる一本道だった。
    本当はその隣の道を歩けば近道なのは知っていたが
    何故かこの道を選んでしまったようだ。
    「なにか起こりそうな希ガス」
    とか思いながら歩いていると突然雨が降ってきた。
    バケツをひっくり返したような大粒の雨。
    あっという間に服を濡らし、
    道を濡らしちょっとした水の流れができるくらいの大雨。
    俺は慌ててコンビニに入った。
    もう中には同じような目にあったと思う人で
    コンビニは混んでいた。
    稲光がして、腹の底から突き上げるような大音響のする中で
    雑誌を立ち読みしながら俺は外を眺めていた。
    空は真っ暗。
    稲光がする度に赤紫色に雲の端が輝く。
    地面に目を落としてみれば
    もうびしゃびしゃで川のように雨水が流れている。
    「親父~・・・ノロイマース!!」
    とつぶやいて雑誌に目を戻そうとした。
    その時、妙なものが目に入った。
    子供だろうか?
    赤い浴衣を着た子供が辻のある方から走ってくる。
    傘はさしてない。
    濡れるがままに子供は走ってくる。
    そして、そのままコンビニの前を通り過ぎた。
    印象に残るのは赤い浴衣とその走るスピードだった。
    顔とかの印象は薄い。
    とにかく走るのがその子は速かった。
    大人並みのスピードでその子は走り去った。
    しばらくして、雨も小やみになったので
    フライング気味にコンビニを出て小走りで実家へ戻ろうとした。
    その時だった。
    ダーンッ!!と落雷のような音が前からした。
    落雷ではない。事故だ!
    そう確信して俺は野次馬根性丸出しで
    音のした方向へ小走りに走って行った。
    案の定、事故があった。
    見通しの良い交差点での衝突事故。
    両方とも前面がひしゃげていて、
    片方はさらに街灯を曲げて止まっていた。
    「やっぱり、ここは忌み辻だわ。」
    幸い、両方の運転手は息があるらしいので
    救急車とパトカーをケータイで手配して俺は実家へ戻った。
    お盆、赤い浴衣の子供、忌み辻での事故。
    嫌な共通点が心に引っかかった。
    実家に帰ると盆提灯が飾られ、
    お供えが山のように仏壇に供えられていた。
    父は
    「降られたろ!迎えに行こうと思ってたんだけど
    なんか嫌な感じがして行かなかった。」
    忌み辻での出来事をかいつまんで話すと
    実家に遊びにきていた伯父、叔母、従姉妹が口を揃えて
    「あそこは何とかならないかなぁ。坊さんに来てもらおうか?」
    と口々に喋っていた。
    あえて、赤い浴衣の子供のことは言わなかった。
    これはタブーだ。
    あの忌み辻にまつわるタブーだ。
    と確信していたからだ。
    今年もお盆がやってきて俺は実家へ帰省する。
    そしてできれば通りたくないが忌み辻も通るだろう。
    赤い浴衣の子供は見たくはない。

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