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ずっとお前らと一緒にいたじゃねえか
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中編3分
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大学の合宿寮が海の近くにあるのですが、 サークルに入ってない者も予約をすれば利用できるので、 夏休みに友達四人で行きました。 その寮は前から『でる』という噂があって、 なにか体験できないかという期待もありました。 しかし、 夜中になっても恐ろしい出来事が起こることもなく、 かと言って大人しく眠る気にもならず、 みんなで海に出ることにしました。 しばらくじゃぶじゃぶ遊んでいたんですが、 夜の真っ黒な海では、 自分が上を向いているのか下を向いているのかもわからないほど 方向感覚が狂い、 (酒が入っていたこともあり) 危ないから帰ろうということになりました。 声を掛け合い、 四人全員いるのを確かめて、 とぼとぼ寮まで戻ったのですが、 門のところで、 それまで一番後ろを歩いていたはずのAが、 いないことに気がつきました。 おかしいと思いながらも、 名前を呼びながら寮の周りや来た道を少し探して歩いたんですが、 見つかりません。 海と寮はほぼ一本道なので迷うはずもなく、 もしや海に置いてきたか!? と慌ててみんなで浜に戻りました。 海辺にAの姿はなく、 大声で呼んでもなにも聞こえません。 たまたま浜を歩いていたおっさんに、 こんな感じの男を見なかったかときいても、 「見とらんなぁ。 友達がおらんのか? 夜中の海はひっぱられるからあかんぞ。 あきらめるしかないわ。 今やったらまだ近場に沈んどるかもしれんが」 と言われる始末。 で、これはヤバイ! とみんな真っ青になり、 海に入って探すと言い出した一人をなだめて、 警察に連絡しようということになったのですが、 たまたま誰も携帯を持って来ていなくて、 大急ぎで寮に戻りました。 そりゃもう全速力で。 ゼエゼエいいながら寮に到着して、 入り口のロビーのとこで酒飲んでた友人(こいつはサークルで来てた)に、 「警察!Aがおらん!!海で溺れたかもしれん!!」 と叫びました。 友人は一瞬ギョッとした顔をしたんですが、 俺らを見て笑いだしました。 「いるじゃねーかよ」 って。 びっくりして振り向くと、 憮然とした表情のAが 息を切らせて立っていました。 驚いたのもありますが、 こっちは必死で探してたもんですから 安堵と共に怒りがわいてきて、 「オマエどこにいたんだよ!」 と詰め寄ったところ、 半分キレかけのAに、 「ずっとお前らと一緒にいたじゃねえか!! ふざけんな!!」 と返されました。 どういうことかと話を聞くと、 Aは最初に海から戻ってきたときも、 ちゃんと一緒に寮まで帰ってきていたと。 ところが門のところで、 いきなり俺ら三人が 「Aがいない」 と騒ぎだした。 初めはからかわれてんのかとも思ったが、 自分を呼ぶ声にいくら返事をしても、 耳に入っていないかのように探し続ける。 いい加減頭にきて、 俺らの腕をつかんだりひっぱたいたりしても、 「Aがいないいない」 と言ってウロウロしている。 さすがに薄気味悪く感じたが、 「海に向かう」 と言い出すので 仕方なくついていった。 もうその頃には返事をする気もなく、 ただ俺らの様子を見ていたら、 俺らは誰もいない方角に向かってぶつぶつ話しだした。 そこで鳥肌が立つくらいビビって、 「オイ!!」 と声をかけたら、 急に寮に向かって走り出したから、 慌てて追ってきた、と。 Aの話を聞いた直後は、 怖いというよりもわけがわからないという感じでしたが、 よくよく考えたらすごい恐ろしい体験ではないかと、 ぞっとしました。 どちらが正しいのかもわかりませんが、 あのとき門のところで探しにいかなかった場合、 俺らにAを見ることはできたのか。 海辺のおっさんは本当にいたのか。 狐につままれたような体験でしたが、 少なくともあの寮にはもう行きたくありません。
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