昔馴染みの話。
彼の親戚に、
山奥の神社で宮司を勤めている人がいる。
そこの社では人形供養もしているという。
あまり有名ではないのだが、
それでも噂を伝え聞く者が絶えないようで、
年を通じて供養依頼の荷が送られてくるのだそうだ。
「藁人形とかの類はないんですか?」
私がそう冗談めかして聞いたところ、
宮司さんが答えるより早く、
古馴染みが笑いながら答えた。
「いや時々あるみたいだけどね。
そのほとんどが出し殻みたくなってて、
何の力も感じられないっていうことらしいよ」
横にいた宮司さんは、
苦笑しながらこう付け加えてきた。
「藁人形じゃないけど、
本当にこれはヤバイって代物はあったな。
薄汚れた箱が送られてきたんだけど、
もう開ける前から嫌な気がプンとして。
持ち上げたら、中でカタリと音がしたんで、
心を決めて中を改めたんだけど」
「何が入ってたんですか?」
「空っぽだったんだ。
間違いなく取り上げた時には、
中に何か納まっていたのに。
でも、とんでもなく嫌な感じがしたよ。
触れた瞬間、全身に鳥肌が立ったからね。
仕方ないから箱だけ供養してみたけど、
さて効果はあったのやら」
宮司さんはそう言って肩を竦めた。