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ミンキーモモ
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長編7分
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10年ほど前の話です。当時学生だった私は、友人とドライブに出かけました。昼間にもかかわらず、「横須賀の心霊スポットを見に行こう」というものでした。場所は、ご存知の方はマニアと呼ばれる『旧*部倉トンネル』。当時、横浜・横須賀道路は開通していたものの、完全竣工までは至っておりませんでした。車ではトンネル跡までたどり着けなかったため、車を降りて徒歩で坂を登っていった記憶があります。トンネル跡まであと少しという所で、私と友人はほぼ同時に急にある方向を見つめました。 何故って?それは得体の知れない臭いが漂ってきたからです。何かが腐って強烈な臭いを発している様な…ここで帰ればよかったのですが、余計な好奇心が後に最悪の事態を招く事を、当時のバカ2人組は全く予測しておりませんでした。さて、無用心にも臭いのする方へ近づいていったバカ2人組。あまりの臭いに、「もう止めるか。こりゃ」と思っていたところ、6~7m先に黒い物がある事に気がついた。「なんだありゃあ?しっかし、くせーなぁ。何かの死骸か?」あたりは背の低い草むらで、(10~15cm位の草が生えていた)私が事もあろうにズカズカと近づいたところ、「ブオオオオオオオォォォォォォンンンンン!!」と、ものすごい音が。「!」「?」何と、無数のハエが飛び立ったのであった。今まで生きてきて、『蚊柱』は何度も見たことがあるが、『ハエ柱』にお目にかかったのはこれが初めてで、かつ、これ以後ない。かなりおっかなびっくりになった2人組にさらに追い討ちが!!「おい…これ…人の形してねぇか」「なぬ??ンゲェェェェェェェ!!」皆さん。焼死体なるものを見た事がありますか?当然、私は初めてでした。まともに死体と目が合ってしまった。一目散に逃げようとしたその時、友人が「四方八方に何か散らばってるが、ありゃ何だ??」「何、のん気な事言ってんだよ。アホ!」と私。が、足元を見れば、確かに何かを細かく切り刻んだものが散らばっていた。紙のような物もあれば、薄いプラスチックのような物もあった。比較的大きな破片もあったので、適当に拾い、御遺体から離れて並べてみると、何かの絵?女の子みたいな。その間、友人は近くの公衆電話へ一目散。当然110番通報。戻ってきて言うなり、「(警察が)着くまでここにいてくれってさ」「…マジかよ」このときは本当に鬱になった。ふと、白い紙切れが近くにある事に気が付いた。私達から向かって右数m先の所に。「現状維持なんじゃねーのか??」と言う友人の声を無視し、私は紙切れを拾った。その紙切れにはこう書いてあった。『ノロウ。ノロウ。コノヨノスベテヲノロウ。ワガウラミ、トワニハツルコトナシ』私は寒毛立った。これ、遺書じゃねーの??恐る恐る御遺体の方へ目を向けてみると、何と、顔がこっちの方に向いてるじゃあ~りませんか…(T_T)頭髪は燃え尽き全身黒こげ。口の一部は腐ったのかハエに食われたのか、一部骨が露出している様にも見えた。ここまでひどく焼けてるとなると、ガソリンかぶったみたいだな…(実は当時、私は科学を専攻していた院生でした)もともと生物の肉体は、そう簡単には燃えない。総体重の半分は水分なのだから、全身黒こげとなると、相当量の可燃性物質を浴びてから、自らに火を放ったとしか考え付かなかった。そうこうしている内に警察が到着。初めて事情徴収を受けましたです。はい。担当のおまわりさんが、「とんだもの見つけちゃったねぇ」と苦笑いしながら私に言った。私は「はぁ…」としか返答のしようがなかった。おまわりさんが「手に持っている紙切れは何?」と聞いてきたので、「近くで拾いました。遺書みたいです」と答え、私は紙切れを渡した。この時、私は妙に冷静だった事を覚えている。ちなみに友人はガクガクブルブルで、事情を聞ける状態ではなかったそうな。そりゃ普通はそうだ。「その細かい物は何かな?」と、別のおまわりさんに聞かれたので、「御遺体の周囲に散らばってます。適当に集めてみたら、何かの絵みたいなんですよねぇ…」何故か私はこの絵に何か見覚えがあった。実はこの絵が更なる戦慄を私にもたらす事になるとは、その時は夢にも思っていなかった。友人は車を運転できる状況ではなかったので、私が運転して帰途についた。家に戻り両親に事情を話した所、見事に沈黙された。食欲など全くわかなかったので早々に寝ることにしたのだが、その時に私は思い出した。「あの絵…確か、ミンキーモモっていうアニメーションじゃなかったか?」正直言って私はアニメには興味がない。が、予備校時代の知り合いに変わった奴がいて、そいつがミンキーモモ好きで、当時いろいろなグッズを予備校内で持ち歩いていたので、思い出したのだ。真性ロリコンで医学部志望。「ちっちゃい子が大好きだから、小児科医になりたい」等とほざく、私が人の親ならば絶対医者にはさせたくない奴であった。といっても、成績は理学部志望の私より悪かったので、「まず、医者は無理だろうなぁ…」とは思っていた。「そういやあいつ、どうしているんだろう…まさかなぁ…」しばらく経って、同じ大学の予備校以来の友人が、私の所属する研究室にやって来た。「時間ある?」「ああ、いいけど…珍しいなぁ。何?」「***が横須賀で、焼身自殺したらしいんだよ。1週間ほど行方が分からなくなっていて、親御さん、捜索願出してたらしいよ。それもさぁ…自分の周りにミンキーモモグッズ切り刻んで、ばら撒いたらしくてさぁ」私は自分の血がみるみる引いていくのを覚えた。「どうしたんだよ??おい!」「それ…見つけたの。俺だ…」絶句する友人。これ以上、会話の必要はなかった…4浪の末、受験したすべての大学の入学試験にPASS出来ず…という事だった。覚悟の上の自殺だったのだろう。奴は私に見つけて欲しかったのだろうか?とにかく、未だにミンキーモモの絵を時たま目にしてしまうと、当時の『ハエの羽音』と『焼け焦げた顔』がフラッシュバックする事がある。私の数少ない恐怖体験であり、トラウマでもある。
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