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鉄道施設の維持管理
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夏に体験したちょっと怖い話です。 (幽霊じゃない) 私は鉄道施設の維持管理をする現場仕事をしています。 その日の仕事は、 線路の上で使うリフト車(軌陸車という車両)の 運搬管理でした。 軌陸車とは、 リフト車の下に車輪が格納されていて、 車輪を展開して線路に乗せることで、 線路を走ることができる車両です。 その日は、終電や貨物が通り過ぎた後、 午前0時に軌陸車を踏切から線路に載せ、 50mくらい離れた場所まで搬入して別の業者に引き渡し、 午前3時に軌陸車を踏切から道路に搬出する予定でした。 (時間はぼかします) で、搬入は順調に終わって、 2時間ほどぼーっと業者の仕事を眺めていました。 現場は住宅街にある高架橋のそばで、 線路上は真っ暗でしたが、 踏切周辺は街灯に照らされて明るかったです。 踏切はたまにタクシーが通るくらいで、 現場には軌陸車以外の重機はなく、 軌陸車のエンジン音以外は静かなものでした。 新人の頃は真夜中の雰囲気を不気味に感じていましたが、 幽霊に遭遇したことなんてないし、もう慣れました。 そして2時30分ごろ、 業者から作業終了の連絡があり、 作業員と一緒に軌陸車を動かす準備を終えた後、 私は線路上に障害物がないか確認しながら、 踏切まで歩いて行きました。 特に異常がないことを確認した後、 無線で運転手にOKの合図を出しました。 すると、 『すみません、 ジャッキの締め忘れがあったので5分ください』 と作業員から回答。 古い車両は油圧がどうのこうのでジャッキを格納した後、 緩むことがあるとか何とか。 3時までまだ時間はあるし、 作業は作業員に任せて、 私は踏切で待機していました。 すると、 20mほど先の交差点から歩行者が一人、 こちらの方に歩いてきます。 県道の交差点から住宅街に入っていく市道 (車が何とかすれ違える位の幅)って感じの道です。 その男は帽子を深くかぶっていて、姿勢も悪く、 なんだか歩き方がぎこちない感じでした。 5時くらいになると ジョギングやウォーキングするお年寄りを 目にすることはありましたが、まだ3時前。 酔っ払いかな~と思いながら、 「歩行者が来るのでゆっくりでいいよ~」 と作業員に無線を入れ、 男を誘導しようと踏切に出ました。 男はひょこひょこ歩きながら向かってくるんですが、 帽子かぶってうつむいているせいで表情が読めない。 男が5mくらい手前にさしかかってきたところで、 「ご迷惑おかけしてます~、お通りください~」 と会釈したところ、 男が急に背筋をびっと伸ばしてこっちを見返してきました。 ギョッとして男の顔を見てみると、 顔がない、というか毛むくじゃら。 「ハ???」 って感じでつっ立っていると、 私の前を通り過ぎる際に首がぐるっと90°回転して そこに男の顔がありました。 軽くパニックになりましたが、 よく見ると、男は服を前後逆に着て、 帽子も反対にかぶって後ろ向きに歩いていたんです。 つまり、 私が顔だと思っていたのが後頭部で、 今こっちを見ているのが顔面だったんです。 メチャクチャ驚きましたが、 相手が人間だとわかると、 こういう変人には関わらないのが一番と思い直し、 「足下お気をつけください~」 とか言いながら線路の方に後ずさりしました。 (現場仕事してるとちょいちょい変なおっさんに遭遇する) すると男はこっちを見ながら 訳のわからない言葉を発しました。 なんか聞き取れない小動物みたいな鳴き声。 マジで勘弁してくれと思いながら震えていると、 男はそのまま歩いて通り過ぎていきました。 『○○さん、こっちOKですけど、 そっちはもういいですか~?』 という運転手からの無線で ハッと我に返りました。 慌てて返事をしながら、 男が歩いて行った方向を見ると、 住宅街の角を曲がっていくところでした。 姿勢はもとの猫背に戻っていて 顔は見えませんでしたが、 なんだか視線を感じたように思いました。 (ていうか背骨どうなってたんだろ) そこからは普通に車両を搬出して 現場は無事に終わりましたが、 心臓がバクバクしていて指示も上の空でした。 終礼後、運転手と話しましたが、 足の悪いおじさんが通ったくらいにしか 認識していませんでした。 会社に帰って、 仲のいい先輩に聞いてみましたが、 あの踏切でそんな通行人は見たことがないと言っていました。 あのおっさんが声に出した 『キュルキュル』みたいな音が、 昔テレビで見た逆再生の音(ドラゴンボールのED?)に 似ていた気がするんですよね。
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