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廃墟になった治療所
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長編5分
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この話は、何年か前の夏休みに、 外国の友達のAの所に遊びに行った時の話。 多分話の始まりは、 『日本のお化け屋敷』だったと思う。 Aはジェイソンとかドラキュラみたいな 『パニックホラー』が好みで、 「日本のホラーハウスは静かでつまらなさそう」 って話から、 「日本では廃墟とか心霊スポットとかに行って、 そういう空気を楽しむんだ」 と俺。 「じゃあ、そういう心霊スポットに行こうぜ!」 という話になって、 Aの友達のBと車に乗って、 往復4時間ほどの山の中の『治療所』に向かった。 どうやらその土地は、 近くで牧場をやっているBの親戚が管理しているらしく、 「狼やコヨーテが出る」 という話で、 違うんだよ! 日本の廃墟は人も動物もいない静かな怖さが風情なんだよ! 馬鹿!と思ったのを覚えている。 道中、車内から鹿?やよく分からない何かの死体が見え、 目的地に近づくにつれ、 喰い荒らされた死体が増えていった。 そして目的地につくと、本当に静かで、 ここで治療生活を送れるなら悪くないな、と思っていたが、 半分腐った木のドアには 『(地名)精神病院』と英語で書かれていたため、 ・人里離れた山奥に『隔離』されている理由。 ・おそらく音に敏感な患者もいただろうから、 静けさの理由が分かった。 Aはドアの前で 「いいな?これはミッションだ!」 と言いながら、バックからご丁寧に お手製?の消音装置の付いたハンドガンを取り出して、 南京錠にぶっぱなした。 錆びていたせいもあってか、 南京錠はぐねっと曲がり、 AとBの体当たりで地面に落ちた。 先にAが、 スパイよろしく銃を構えながら中に入る。 まだ昼だったこともあり、 薄暗いだけのエントランスホールはほぼ原型のままで、 掲示板に貼られたお知らせや、 カウンターの紙コップとポットまでそのままだった。 俺は掲示板の、 一番手前側の一枚を読んだ。 『新院へ移動のお知らせ』で、 『施設の老朽化や一部の倒壊により移動がある』と書いてあり、 日付は1988/8/21だった。 次は 『C棟15号室の○○さん死亡のお知らせ』で 日付は1988/8/18。 以下5枚が5名死亡のお知らせで、 間に2枚『講師変更のお知らせ』で、 あと2枚がC棟での死亡者2名のお知らせ、 日付は1988/8/6だった。 全部読んでから気が付いた。 ここは『精神病院』で、 こんなに立て続けに死者が出るはずがない。 すぐにカウンターを漁っていたABにこの事を報告したが、 「そいつはいい!やる気が出る!」 という返事だった。 1階の病室、診察室を回ってみるも、 多くの残留物を発見するも特に異変は無し。 切り裂かれた人形や、 ぼろぼろになったベッドがあったが、埃まみれで、 当時の患者の犯行らしかった。 Aは地下に降りる道を探していたが、 階段は1つ崩れていて進行不可。 もう1つは降りた先の扉が開かなかったため、 しょうがなく2階に行った。 2階は遊戯室や図書室があるくらいで、 病室は無い。 が、『C棟→』という標識を見つけ、 みんな矢印の指すままに階段を降りた。 どうやら隔離病棟らしい。 鉄の防火扉チックな門にかんぬきがかけられ、 さらに南京錠まであった。 Aは南京錠に鉛弾をぶちこんだ。 なかなかしぶとかったが、 結局南京錠が負けた。 中はさらに4つの小部屋への扉があり、 一つ一つ鍵とかんぬきが外側にかけてあった。 一番左を開けると、 一面黒っぽい部屋に、 簡素なイスとベットがあった。 良く見ると、 イスの下やベッドの後ろは白かった。 2つ目3つ目もそんなんだった。 1つ目から3つ目の戸にかんぬきをかけ、 4つ目を開けた。 4つ目はまた異様な部屋だった。 床には何かベットの綿らしきものが散乱し、 四方の壁にはマットが付けられ、 壁のマットはほじくられ、 コンクリートが所々露出していた。 バタン、という音がし、 3人とも飛び上がった。 俺とBの視線は、 ベッドの上に釘付けになった。 ビダン!バダン!ビダン!ビダン! と、魚のようにベッドの上の何かが跳ねまくる。 俺は声を出してはいけないと口を噤んだが、 Bは 「ひぇ…」 と声を漏らした。 途端にそれがバン!と起き上がった。 両手の無いらしき人っぽい何か。 坊主頭で、 目の位置にはアップリケが縫いつけられていた。 俺はAとBの手を引いて部屋から駆け出た。 ソイツはよたよたとこっちへ歩いてきていたが、 俺はバン!とドアを締めかんぬきをかけた。 ゴン!ゴン!ゴン!と ドアに何かをぶつける音がした。 Bは泣き出しそうだった。 俺は上への階段にBとAを引きずりだし、 またかんぬきをかけた。 それからは車まで無言だった。 Aはむすっとしてるし、 Bは泣いていた。 車に帰るとAが、 「チキンが。Bはともかく情けねぇな。 せっかく地下への階段を見つけたのに、 そこのドアが動いてたぐらいでビビって」 俺とBは、 あの部屋にはドアも階段も無かったと言えなかった。
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