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ある山のトンネル
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中編4分
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その先生は理科の教師で、 自分から言いふらしたりはしないが霊感がある、 という噂が流れていた。 これからはその教師をK先生と呼ばせていただく。 一例を挙げると、そのK先生とNという生徒が 理科室で二人きりで話している最中、 K先生は全く別の方向、 N以外の誰かを見ている様子だったという。 Nは不思議に思ったが、 そのまま話を続けたそうだ。 そしてNが話し終わった後、K先生は 「今ストーブの方向を見るなよ。」 と言ったそうで、Nは気味が悪かったので ストーブの方を言われたとおり見なかった。 しばらく緊張感のある沈黙が流れると、 突然K先生が 「あ」 という声を上げ、 それと同時にボッとストーブの火が消えたんだそうだ。 後で確認した所、灯油は十分に残っており、 先生の不可解な行動から 「霊」を見ていたんじゃないか?ということになり、 それは校内にあっという間に広がった。 そしてこの話は教員にも伝わり、 国語の教師Lと数学の教師Mが 肝試しに、幽霊スポットとして有名な、 ある山のトンネルに行くことにしたそうだ。 そのトンネルは、 今では廃トンネルだが 工事の最中に多数の工員が死んだらしい。 緊迫感あるようにL先生視点。 俺とKは、Mの車に乗せてもらい 例の霊のいる(駄洒落か)廃トンネルに行くことにした。 夏休みのある日曜日の話である。 都市伝説的な話だとは思うが、 もし霊がいるなら霊感のあるという Kが見つけてくれるだろう。 山のくねくねした道を通り、 例のトンネルに到着した時には 夜に待ち合わせたお陰もあってか、 既に夜の11時を回っていた。 Mのいう話、 このトンネルでは霊を呼び寄せる方法があるらしく、 「まずトンネルの中をしばらく進み、 2つ目の非常口の前で止まる。 そして深夜0時、余分な明かりを一切つけず、 クラクションを4回鳴らす。」 というのがその方法だそうだ。 無論車の正面のライトは禁止。 時間に余裕があったが、 とりあえずは2つ目の非常口を探す。 見つけたが意外と奥にあり、 出口(俺達の入ってきたところ)は真っ暗なせいで よく見えない。 この時点で11時15分。 俺達はしばらく雑談をして時間を潰した。 あと、座席を説明しておくと、 運転がM、助手席に俺、後部座席にKである。 11時55分になると、全ての明かりを消し、 いつでもクラクションを鳴らせる状態にした。 そしてLの時計が0時になった時、 クラクションを4回鳴らした。 ・・・・ 沈黙が流れる。 1分が5分くらいに感じられる。 暑いことから流れるのではない、ひんやりした汗。 緊張が流れる。 5分が過ぎた頃、Mが言った。 「なあ、やっぱり何もいなかったん・・・」 言い終える前に、Kが言った。 「な、何を言ってるんです・・・? そ、そこら中に・・・・」 歯をガチガチと言わせながら、 Kが辺りを見回す。 俺とMも周りを見るが、何も見えない。 俺達はKがふざけているんだと思って、 逆に笑っていた。 だが、状況は一変した。 Kからの声が聞こえない。 さっきまで聞こえていたKの歯の音が消えていた。 「ん?」 俺はおかしいな、 と思って車の天井のライトを探り当ててつけた。 ・・・Kは失神していた。 「おいK!」 俺が呼びかけるが、Kからは返事はない。 「シッ!静かにしろ!」 Mが小さい声で俺を制した。 ・・・何か音が聞こえる ・・・ベチ・・・。 ・・・バチ、ベチ・・・ 何かを叩きつけるかのような音。 流石に、ヤバイと感じる。 「おい、M、車・・・」 「ああ・・・」 車のエンジンをかける。 ・・・かからない。 「か・・・かからねえ・・・」 Mが泣き顔になりながら言う。 ヤバい。何とかしないと・・・。 俺はまず明かりをつけた。 車の中の懐中電灯で辺りを照らす。 いざという時の為に持ってきた、 電源が電池のランタン。 それが辺りを照らす。 ・・・・ さっきまでの音は止む。 「ハア・・・ハア・・・。」 俺達は既に汗をびっしょりとかいていた。 Mがもう一度エンジンをかける。 今度はエンジンのたのもしい振動と音が伝わってきた。 正面のライトもつけ、 できるだけ明るくしながらトンネルを出た。 トンネルを出たら、 俺はKの状態を見るために後部座席に移った。 Kは今は呼吸もしているし、 大丈夫のようだ。 俺達は明るいところを求め、 ガソリンスタンドに車を入れた。 とりあえず安堵のため息が出てくる。 「おい・・・L・・・」 Mが俺を呼びかけてくる。 「ん・・・なん・・・・」 言い終える前にまた背筋が凍った。 車のガラスというガラスに、 つけた覚えのない、 手形がベットリと無数に・・・・・・
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