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目にやさしいダークモード
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長編7分
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私の父親は山好きです。 当然、山関連の友人も多く、 私も山へ行く度にそうした方々と話をしました。 そして、その友人の中にAさんという方が居ます。 私が彼と最後に話をしたのは高校生の頃です。 高校卒業後、進学の関係で地元を離れてからは一度も会っていない上、 結構な年齢に達していた筈なので、 今は亡くなってしまっているかも知れません。 Aさんは県内でも山深い山村の出身で、 実に色々な話を知っていました。 私にも沢山の話を教えてくれましたが、 その中でも印象深い話をさせて頂こうと思います。 Aさんが少年の頃(戦前)、 罠を仕掛けては狸や狐、イタチなどの小動物を獲っては、 皮を剥いで売っていたそうです。 (当然、今では許されない事だと思いますが) そんなある日の事。 Aさんはいつものように仕掛けた罠を見回りに、 山へと入りました。 獲らぬ狸の皮算用をしていたAさんですが、 その日の収穫はゼロ。 すっかり気落ちしたAさんは、 元来た道を引き返し始めました。 ところが、通いなれた道、目を瞑ってでも帰れる、 自信のある山道であった筈なのに、 周囲の風景がまるで違うのです。 「どこかで道を間違えたのか? いいや、そんな筈は無いんだが…」 Aさんは見覚えのある道を探し始めました。 が、行けども行けども知らない場所ばかり。 そうこうするうちに日も暮れ始めました。 「これはいよいよマズイぞ。 下手をしたら、山で夜を明かさないといけない」 何とか元の道に出ようと必死になりましたが、 全ては徒労に終りました。 すっかり暗くなった山の中でAさんは途方に暮れました。 ところが…。 耳を澄ませると、 どこからか人の話し声が聞こえる。 最初は幽霊か何かと思ったのですが、 よくよく見渡せば遠くに灯かりも見える。 「しめた!人が居る!今日はあそこに厄介になろう」 Aさんは灯かりを目指して歩き始めました。 やがて、灯かりのすぐ目の前まで来たAさん。 焚き火がチロチロと燃えています。 焚き火を起した主に事情を説明しようとしたのですが、 そこで言葉に詰まってしまいました。 焚き火の前には、2人の人が居ました。 どちらも女性で、 焚き火を挟んで向かい合い、 何事かを話しています。 2人はとても美人で、 豪華な着物を着ていました。 綺麗なのは大変結構なんだが… でも、どうしてこんな山の奥に、 女性が2人きりで居るんだろう? 何も話せずに突っ立ってるAさんに、 片方の女性が、 「そこでは寒いでしょう、近くで当たりなさい」 と、優しく声を掛けてくれました。 Aさんは無言で火の近くに行くと座りました。 2人は相変わらず話を続けています。 そこで、Aさんは変な事に気付きました。 目の前の焚き火なのですが、確かに燃えている。 燃えてはいるが、薪が無い。 また、音も全然無い。 ただ、地面の上で火が燃えてるだけなのです。 こんな火などあるものか。 きっと、この2人は人ではない。 狐か狸か知らんが、きっと化かされているのだ… これは大変な所へ迷い込んだものだ… せめて、怒らせないように気を付けないと。 さっきまでは人が居て助かったと思っていたAさんは、 急に心細くなりました。 兎に角、目の前の2人は人でない事は確かだ。 下手をすれば命まで取られかねない…。 すると突然、 「お前は、○○の所のAでしょう?」 声を掛けられました。 先程声を掛けてきた女性が、 いきなり話し掛けてきたのです。 何で俺の事を知っているのだ… 内心ビクビクしながら、 正直に答えようかどうか迷いました。 正直に答えたら喰われてしまうかも知れん。 何せ、今まで俺は結構な数の狸だの狐の皮を剥いでるんだ。 こんな所で仲間の敵討ちなどされたら、 逃げようが無いじゃないか。 「隠さなくても良い、 こちらはお前の事をよく知っている。 お前の父や母の事も、よく知っている」 Aさんは何を言われているのか全然分かりませんでした。 俺の父親や母親を知っているってどういう事だ。 「あまり子供を驚かせるものじゃない。 見なさい、怖がってるでないの」 もう1人の女性が、 答えに詰まっているAさんを見かねてか、 助け舟を出してくれました。 彼女は続けて話します。 「私達に化かされていると思ってるみたいだけど、 決してそんな事はしないから安心しなさい。 明るくなってきたらね、道を1つ越えて更にずっと下りなさい。 そうすれば、村への道に出られるから」 何とかAさんは声を出しました。 「何で俺の事を知ってるんですか?二人は誰?」 すると、2人はそれぞれ名前を言いましたが、 やたらと長くて難しい名前でした。 「立派な名前ですね」 と言うと、二人は笑って返しました。 そして、 「私達は皆、こんな名前だから」 と言いました。 やがて、夜も明けてきました。 すると、 「そろそろ山を下りなさい。 さっきも言ったけれど、ここを真っ直ぐ下りなさい。 途中で細い道があるけれど、それを行ってはいけない。 その道を越えて、更に下へと下りなさい」 「その細い道は何の道なんですか?」 とAさんは質問しましたが、 「知ってもしょうがない事だから」 と返されるだけでした。 2人に別れを言い、 Aさんは山を下り始めました。 下りる途中、後ろを振り返りましたが、 既に灯かりは消えて人の気配も消えていたそうです。 女性に言われた通り山を下ったAさんですが、 さっき言われたような細い道が見えてきたそうです。 ここを下った方が、 早く山から出られそうなんだけどなぁ… そんな考えが頭を過ぎります。 「行っては駄目だと言われたけど、 見た目は全然普通の道だし、 この道を下ってしまおう!」 そう思って踏み出そうとした時です。 道の奥から、 人が1人歩いて来るのが見えました。 なんだ、俺以外にも人が居るじゃないか。 やっぱりさっきの2人は狐か狸だ。 この道を無視して更に下ったら、 滝壺なんかがあるに違いない。 危ない危ない、 騙されるところだった。 そう思いながら、 道を歩いて来る人に声を掛けようとしたAさん。 が、相手の姿を見て絶句してしまいました。 見た目は確かに人でした。 そして、昔の貴族の従者が着てるような狩衣を着ています。 しかし、Aさんが驚いたのは、 その人の服装ではありません。 その狩衣を着た人物。 袖から出ている手足に、 皮膚も無ければ肉も無い。 要するに、白い骨が剥き出しになっていました。 また顔には、 目の部分だけに穴を開けた木の面を被っています。 その下も白骨であろう事は、 当然予想できました。 そいつがフラフラと道を歩いて来る。 何故白骨が歩けるんだ。 これこそおかしいじゃないか。 Aさんは、とっさに茂みに身を隠しました。 逃げようとして下手に動くより、 藪に隠れてやり過ごそうと考えたのです。 その白骨は、 相変わらずフラフラと歩いてきます。 そしてよくよく見れば、 何かを引きずっているようでした。 その引きずってる物を見て、 Aさんは再度仰天します。 足に縄を掛けられた白骨でした。 しかし、引きずっている奴が狩衣を着ているのに対して、 引きずられている白骨は立派な着物を着ています。 恐らく、貴族か何かなのでしょう。 Aさんが推測するに、 狩衣の男は主殺しをしたのではないか、との事です。 ここで言う『主』とは、 引きずられている貴族風の白骨。 その従者たる男は、 その罪の為に死罪となったのではないか…。 が、当時のA少年は、 そんな事を考えるほど余裕がありません。 ただただ、頼むから気付かれませんように… と願うのが精一杯でした。 やがてその白骨は、 Aさんの隠れている茂みの前までやって来ました。 そして、そのまま通り過ぎてくれるかと思いきや… そこで立ち止まって周囲を見渡し始めました。 しまった!気付かれたか… 狩衣の白骨は、縄を持つ方とは逆の手を、 そろそろと腰の刀に伸ばします。 もはや一刻の猶予もなりません。 見付かるのは時間の問題であるように思えました。 いや、既に見付かっているのかも。 じっとしていても見付かる。 ここはイチかバチか…やるしかない。 Aさんは声にならない声を挙げながら藪から飛び出し、 一足飛びに道を飛び越えて、 転がるように山を下り始めました。 後ろからは刀が空を切るような音がしましたが、 振り返る勇気などありませんでした。 躓いたり転んだり、 枝に顔を打たれたりしながらも必死に山を下り、 気付けば自分の住む村のすぐ近くの道に出ていました。 日はすっかり昇っていましたが、 それでも安心できずに村まで駆けて行きました。 村では、 「Aが消えた、神隠しにでも遭ったのではないか」 と話し合ってる最中でした。 Aさんは事の次第を両親に話したそうです。 それを聞いた両親は、 「山の神様が息子を護って下さった」 と大層喜んだそうです。 また、2人の女性が話した「自分の名前」ですが、 1つは村の近くにある山、 もう1つは少々遠方だが有名な山に居る神様の名前ではないか、との事でした。 狩衣の男と貴族の白骨に関しては、 両親も全く知らなかったそうです。 Aさん自身も色々調べてみましたが、 結局分からなかったそうです。 もし、Aさんが女性の言う事を聞かずに、 最初の道を行ったらどうなっていたか、 もし、狩衣の男に捕まっていたら…全ては闇の中です。 ・「忌」怖い話 (竹書房怪談文庫)
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