ダークモード

【洒落怖】異次元の人

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  • どんなにセンセーショナルな体験でも、
    説明が出来ないことっていうのは
    記憶の片隅に追いやられていくもんだね。

    今はもう20代の俺だけど、
    そんな10年ほど前の体験があるよ。

    10年ほど前、
    俺が四年生のときに、
    通ってた小学校で起きた出来事だよ。

    確か春休みに入る直前の日で、
    その日は学校に来て
    1、2時間だけ授業をやる、
    その後に全校生徒が体育館に集まって終業式をしてから、
    各自の教室で担任に通信簿をもらう、
    そしたらお昼過ぎには帰れるというのがパターンだった。


    春休み前だから、
    妙に浮かれてたね。

    みんなにもわかるかな。

    午前中だけ授業の日のあのワクワク感。

    俺もその日の午後は
    友達のアキヨシんちに集まって
    みんなでゲームやろうとか予定してたし、
    朝からワクワクが止まんなかったよ。

    当時はPS2の三国無双が俺らん中で
    激アツいゲームだったね。

    よく友達のアキヨシんちにクラスの連中で集まって、
    交代プレーしたもんです。

    まぁ、そんなこんなで、短い授業を終え、
    終業式を終え、
    やっとこさ帰れる時間が近づいてきたわけだよ。

    体育館での終業式から教室に戻ってきた俺たちは、
    担任が来るのを待ちながら
    各自好き勝手におしゃべりしてた。

    廊下の向こうには同じ階に教室がある5、6年生たちが
    ゾロゾロ歩いて教室に帰る途中で、
    周囲はかなり騒々しい状況。

    今日アキヨシんちに集まる人、
    どのキャラ使うか、
    あーでもねーこーでもねー、
    みんなで話してる最中だった。

    急に、
    廊下から聞こえてくるザワザワのボリュームが
    大きくなったんだよ。

    よく大勢の人が驚いたときとか、

    「どよっ…」

    てなるじゃん。

    あんな感じで。

    俺らも無意識に
    廊下の方に視線を向けたんだ。

    教室にいたほとんどが
    廊下のほうを振り返ったと思うよ。

    廊下に面した壁には全て窓がついてるから、
    廊下の様子はよく見えるんだ。

    廊下にいる大勢の5、6年生は、
    みんな一様に右のほうを向いて
    「どよっ…」してる。

    その中には後ずさりする生徒も、
    左のほうに逃げ出すやつも見える。

    なになに?
    なにがあんのよ右のほうに?
    なにが右から来てんのよ?

    俺らもイスから立ち上がって、
    廊下の方へ行ってみようとした時だ。

    真っ白い人影が、
    右手の方から廊下の視界の中にフェードインしてきた。

    真っ白い人影っていっても
    伝わるかどうかわからんが。

    2メーターちょいくらいありそうな、
    真っ白い煙が凝集したような人影が、
    やや早歩きなペースで廊下を普通に歩いてってるの。

    そんなもんが見えてるもんだから、
    教室にいる俺たちもますますヒートアップだよ。

    「オイオイ何だあれ!」

    と真っ先に教室から廊下に駆けてったのはアキヨシだ。

    俺らもそれにつられるように、
    廊下に飛び出す。

    後ろから見ても、
    それはやっぱり人影だ。

    ただ、首から上、
    手足が妙に細長いのが気になる。

    その体のアンバランスさがすげー不気味だったけど、
    廊下の端と端に区切られた恐慌状態の5、6年生たちの間を
    普通にのっしのっし歩いていくあたり、
    なんとなく何もしてこないような、
    安心できそうな気もする。

    ただ歩くだけかコイツは、と。

    中には無鉄砲な5、6年生もいて、
    何人かはその白い人影に付いていきながら、

    「ウェーイ」
    「なんだ触れねーよ!」

    とちょっかいだしてるし。

    俺らの中でも
    一番そういう奴らに近いのがアキヨシだから、
    アキヨシもダッシュで人影をすり抜けたり、
    混じって遊んでるんだ。

    俺を含むアキヨシ以外のクラスの連中は、
    そんな彼らを後ろから追いかけて

    「アキヨシやばいって!」
    「やめとけって!」

    と大声張り上げる。

    5、6年のクラスの担任とかも
    廊下で立ちすくんでる生徒たちを自分の後ろにやって、

    「やめろーー!!」

    っていつもみたいに怒鳴るんだけど、
    全く聞く耳無し。

    うちの担任の女先生は
    職員室から教室に来る途中でその騒動に出くわしたらしく、
    廊下の途中にポカーンと突っ立ってた…

    で、散々暴れまくってるアキヨシが、
    大きくジャンプしてそいつの首に

    「オラァーーっ」

    ってラリアットかましたの。

    そしたらずーっと歩き続けるだけだった人影が、
    突然ピタッって立ち止まった。

    あ、やばい。

    廊下にいるみんながそう思っただろう。

    俺らも人影が初めてリアクションを示したことに
    ビビッて立ち止まる。

    一瞬でしんとした中、
    アキヨシの

    「ラァーっ…」

    という語尾と着地音だけが響く。

    次になにをするんだろうこいつは。

    みんなマジで怯えてた。

    アキヨシと人影が対面する形になって、
    人影がアキヨシと目線の高さを合わせるようにしゃがみこんだ。

    そして、
    すっとひょろ長い頭を下げて、
    アキヨシの頭と重ねたんだ。

    するとどういうわけか、
    人影が消えたんだよ。

    まるで目の前の状況が理解不能、
    皆がでっかいクエスチョンマークを浮かべてる中、
    アキヨシがそのまま後ろにどおっと倒れるのが見えて、
    俺も我に返った。

    「オイオイオーイ!」

    とみんなで駆け寄ったら、
    アキヨシの奴、
    半白目で失神してんの。

    うー、うー、
    頭を小刻みに振りながらさ。

    すぐに担任も駆け寄ってきて、
    俺らみんなで保健室にアキヨシを運んだ。

    保健室に運ばれたアキヨシは
    まだそのまま目を覚まさなくてさ、
    俺らはとにかく教室に戻るように言われたんだ。

    もう低・中学年の教室では
    通信簿も帰りの会も終わったころで、
    集団下校の時間も迫ってたから。

    その後は特に変わったことも無く、
    担任はいつも通りに事態を進行させてた。

    教室で通信簿もらって、
    下校するようにと。

    クラスはみんなして、
    さっきのはなんだったんだ、
    アキヨシどうしたんだ、
    とめちゃめちゃにざわついてるし、
    さっきあの廊下にいた全ての生徒のクラスもそうだったろう。

    それが終わっても、
    俺らはアキヨシのいる保健室にいようと思ったんだけど、

    「帰りなさい!」

    と一喝されて下校。

    アキヨシはその後すぐに
    お母さんが迎えに来たらしい。

    家に帰って親に今日あったことを話しても

    「ハイハイ何いってるの」

    みたいな対応だし、

    その日はアキヨシ以外のメンバーんちに集まって、
    とりあえず三国無双して解散した。

    次の日の朝にアキヨシんちに電話したら、
    アキヨシがもう目を覚ましてるって聞いて、
    みんなで即駆けつけた。

    アキヨシ家に着いたらアキヨシ母は

    「うちのアキヨシ、
    貧血で倒れたんだって?
    保健委員が運んでくれたんでしょ
    ありがとね~」

    的なこと言ってるし。

    いやいや違うだろおばさん。

    でもアキヨシに会ったらマジで普通で、
    みんなとりあえず安心したよ。

    アキヨシはあの後、
    保健室で目を覚まして家に帰ったらしい。

    で、
    記憶も人影に頭を重ねられた時点までしかなくて、
    気がついたら保健室のベットだったそうだ。

    「頭あわせられてなんで失神したの?」

    と聞くと、
    白い人影が自分に向かい合ってしゃがみ、
    頭が近づいてきて、
    よくわからん夢の風景みたいなもんが
    沢山フラッシュしたかと思ったら、
    次の瞬間には保健室だった、と。

    なんだよその夢の風景って、
    とみんなで聞いても

    「なんか見たことある気がするんだけど、
    現実っぽくない感じがする夢の風景に似てる。
    都会とかその辺の風景っぽいんだけど色々だったよ」

    と不明瞭な答えしかいただけなかった。

    ふーん…?
    と腑に落ちない俺らだったが、
    とりあえず三国無双して解散した。

    その後、学校では白い人影を
    「異次元の人」と呼んで、
    アキヨシはそれにラリアットをかましたということで
    ヒーローだったね。

    それもほんの少しの間だったけど。

    やっぱ意味のわからない体験とかって、
    すぐに日常の中に埋もれちゃうみたいだ。

    今でさえ、
    地元の仲間と集まるとたまーにその話になるよ。

    俺もみんなもハッキリと
    当時のことはよく覚えてるんだ。

    でもどうして白い人影が急に学校に現れたのか、
    夢の光景ってなんなのか、
    それぞれ脈絡がないカオスな要素ばかりだから、
    それ以上に話は展開しない。

    ただ、10年前、
    あそこにいた俺たちは確かにそれを体験したはずだ、
    という頼りがいのない気持ちが残るだけだわ。

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