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真っ暗闇の崖
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中編4分
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先に言っとくけどわたし自身は霊感なし。 高1の夏休みの時の話。 当時わたしはバスケ部のマネージャーをしてた。 わたしの他にマネージャーは2年生のA先輩の計2人。 そんで4日間の日程で合宿があったんだ。 細かい場所は覚えてないんだけど、 新潟県の湯沢市ってところ。 近くにトンネルがあったと思う。 行く前は初めての合宿でワクワクしてたんだけど、 合宿所に着いたら意気消沈。 まぁボロい…。 木造の少し大きめのアパートみたいな建物が2棟と、 古ぼけた体育館。 外に洗濯機が3台ぐらい置いてあって、 目の前は崖で下を覗くと川が流れてた。 それでも合宿が始まって、 暑さにバテながらも休憩時間には少し離れたところで川遊びしたり、 都会で生まれ育ったわたしには景色とかすべてが新鮮で楽しかった。 3日目の夜だったかな。 その日はもう疲れてて、 いつも夕食前にしてたユニフォームの洗濯を後回しにしちゃってたんだ。 夕食食べて部屋でA先輩とゴロゴロしてた。 「そろそろ洗濯しなくちゃですね~」 「そうだね~」 なんて会話して、 2人で外に出たんだ。 そしたらもう外灯なんてないからまっっくら。 大袈裟かもしれないけど、 目が慣れるまで歩けなかった。 唯一、洗濯機があるところだけ小さいランプみたいのがついてて そこ目指して歩いた。 まぁたどり着いて A先輩とユニフォームをポイポイ洗濯機に放り込んでたんだ。 そしたら急にA先輩がバッと後ろ振り返った。 後ろは崖ね。 わたしもつられてビクッとして、 「虫ですか~?」 って言ったんだけど A先輩、無言でずっと崖の方見てるわけ。 もう崖の方なんて真っ暗すぎて何にも見えないのに。 そんでAさんが突然、 「ごめん、わたし部屋に戻るね」 って言って猛スピードで建物に向かって走ってった。 取り残されたわたし、パニック。 え?!なんで?!洗濯は?!てゆーか怖いよ!! とか思いながら とりあえず残りのユニフォームを全部つめこんで スイッチ押してわたしもダッシュで部屋に戻った。 そしたらさ、 A先輩大の字で爆睡。 ほんっとに爆睡。 声かけてもまったく起きない。 わたしが部屋に戻るまでたぶん数分。 こんなすぐ爆睡できるもんなの?! てゆーか息してるよね?! って、またわたしパニック。 顧問とか部員呼ぼうかと思ったけど、 なんかおおごとになっても嫌だし…と思い、 とりあえず呼吸で胸が動いてるの確認して A先輩が起きるのを待ってた。 たぶん1時間ぐらいして、 パッと起きたんだ。 とっさに 「大丈夫ですか?!具合悪いですか?!」 って聞いたら、 「ごめん、大丈夫だよ。 だけどさっき洗濯機のところで見えちゃって…」 「え…見えたって…」 「ユニフォームを洗濯機にいれてるとき、 なんか背中が急にジリジリしてね。 それで後ろが気になって振り返ったんだ。 そしたらさ、あんなに真っ暗闇のなか、 4~5歳ぐらいの真っ白な男の子が浮いてた…」 「え…あそこ崖ですよね…?」 「うん…。 しかも、首、手、胴体、足が全部バラバラで浮いてたの… それですごい無表情で睨むようにこっち見てた」 「えぇ…」 「それで急に気持ち悪くなって戻って来ちゃった…ごめんね。」 わたし自身が見えたわけじゃないんだけど、 あの時のA先輩の様子とめちゃくちゃ顔色悪いのを見て、 嘘じゃないと思った。 結局洗濯が終わったユニフォームを取りに行く気にもなれず 日が昇ってから取りに行った。 もう帰りのバスも2人とも無言で、 早く帰りたくて仕方なかった。 わたしはそのあと色々あってマネージャーをやめちゃったから 翌年以降のことは分からない。 10年ぐらいたつけど、 今でもあるのかなぁ、あの合宿所。
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