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大事な電話
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俺が大学2年の時の実話です。 その日のことは、 現在でもはっきりと覚えている。 その日、朝起きると、 『今日は絶対出かけちゃダメだ。 大事な電話がかかってくるぞ』 と、何の根拠もないのに、 なぜか強い確信が胸の内から沸きあがってきた。 なぜか分からない。 でも俺はその予感を信じて、 大学の講義を自主休講し、 自分の部屋まで電話コードをのばし、 かかってくるあてのない電話をじっと待っていた。 お昼過ぎ、1本の電話がかかってきた。 それは高校の同級生の女のコだった。 なんでも、今は東京に住み込みで働きに出ているが、 数日休みがとれたので帰省していて、 ちょっと電話してみた、とのことだ。 その子とはあまり話をしたことがなかったのだが、 電話で話しているうちに高校の思い出がよみがえってきて、 なんだか楽しい気持ちになってきた。 そんな雰囲気だったので、 「せっかくだからこれから会おうよ」 と誘ってみたが、 『今日はダメなんだ、でもまた連絡するね』 という返事だった。 それからも、 いろいろと高校の頃の出来事を言いあって、 笑ったりした。 なんとなく話題もなくなって、 そろそろ電話を終わろうかという時、 彼女はこんなことを言った。 『ねえ、そういえば、 B子ちゃんおぼえてる? あの子に電話したんだけど、 なかなか繋がらなくて…』 B子というのは、 俺と同じバレーボール部に入っていた同級生で、 俺とはまぁ仲が良かった女の子である。 『私、すぐに帰らなきゃいけないから、 Aクン(←俺)に伝言頼めないかなぁ』 と言うのである。 別に断る理由もないので、 すぐに「いいよ」と了承した。 『あのね、こう言ってもらえば分かると思うんだけど、 B子ちゃんといっしょに書いた手紙、 もういらなくなっちゃったから、 捨てちゃっていいよって、それだけ』 「うん、わかった。伝えておくよ」 と、俺は電話を切った。 はて、電話ならいつでもできるのに、 どうして伝言頼むのだろう?と、ふと思ったが、 B子ともたまには連絡を取りたかったし、 その口実が出来たので深くは考えなかった。 1週間ほどたった夜、 俺はB子の家に電話をした。 B子はすぐに電話口に出た。 俺からの電話を少し驚いているようだった。 「こないだね、 (仮にCちゃんとします)から電話があってね、 伝言頼まれたよ」 『え?C…ちゃん…?』 「うん。ええと、 いっしょに書いた手紙はもういらなくなったので、 捨ててください、って」 俺は頼まれた通り伝言を伝えた。 …どうしたんだろう? B子から返事がない…? なんだか電話の向こうで、 しゃくりあげる声がかすかに聞こえる。 …泣いてる? 「どうしたの?」 俺は心配になり声をかけた。 『あのね、Aクン、ヒクッ、 私がCちゃんと仲が良かったのは知ってるでしょ』 いつもつるんでいたのは知っていたので、 俺は「うん」と答えた。 『Cちゃんといっしょに書いた手紙ってね、 ラブレターなの。 ヒクッ、それね、Aクンへのラブレターだったの』 どういうことか飲みこめず、 俺は何も言えなかった。 『あの頃私たち、Aクンが好きだったんだヨ。 ヒクッ、でね、いっしょにラブレター書いたの。 渡すつもりは最初からなかったから、 将来結婚してください、とかね…書いてたの… それをね、卒業するとき、 Cちゃんが私に持っててって言うから、 私が預かったの…』 俺は何だか良く分からないまま、 「え?今Cちゃんて何してるの?」 と、とっさに聞いた。 『…Cちゃん…Aクンしらなかったの? ヒクッ…Cちゃん高校卒業と同時に、 急性○○病(病名は伏せます)で入院してたんだよ』 B子はさらにこう続けた。 『先週、Cちゃん手術したの…でも…だめだったみたいで…』 そこからは、 B子の泣き声で会話にはならなかった。 話はここまでです。 B子が言うには、 あたしの電話は夜かければすぐに繋がるので、 きっとCちゃんはAクンと話しがしたくて、 B子の電話が繋がらないと嘘を言ったのだろうということだった。 俺はあのとき、 Cちゃんと電話で楽しく話ができて、 本当に良かったと思っています。 不思議な体験は、 冒頭の予感の部分だけですが。 (すみません) 後日談として、 B子とはこれが縁(?)で結婚しました。
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