十年ほど前、友達のAは山に登った。
(どこの山だか忘れたらしい)
そんな急な斜面じゃ無かったから、
Aは親達を置いて走って登っていた。
親と離れすぎたので待っていると、
道から外れた所に鳥居が在るのを見つけた。
好奇心から鳥居をくぐろうとした時、
「くぐるな」
と、女の子でも出せ無いような声で止められた。
周りを見ると、すぐそこに狐が一匹いた。
?と思った時、狐があの透き通るような声で、
「この先は、人の入る所に非ず」
と言って、鳥居をくぐった瞬間、狐は消えてしまった。
急に怖くなり、
親と合流してさっきの場所を通ると、
鳥居は無くなっていた。
Aが言うには、
「あの先は、狐の国になっているに違いない。
何故なら、あの狐は鳥居に入る時、二本足で歩いていたからだ」
と、しみじみと語っていた。